大脳基底核間接路に位置する視床下核ー淡蒼球外節神経回路は、正常時とパーキンソン病に代表される運動疾患時に顕著な神経活動変化を示すことから、運動機能において重要な役割を担っていると考えられているが、その活動遷移、特に、パーキンソン病の原因であるドーパミン枯渇により引き起こされる活動遷移については未だ不明な点も多い。当該神経回路モデルを作成し、その回路動態の1.視床下核・淡蒼球間の回路結合様式との関係、2.細胞膜特性およびシナプス伝達特性に対するドーパミンの作用の影響、3.皮質ー視床下核および線条体ー淡蒼球入力に対する応答特性、について調べた。それぞれの結果は次のとおりであった。 1.興奮性の視床下核ー淡蒼球投射と淡蒼球内の側抑制の結合範囲が一致し、かつ抑制性の淡蒼球ー視床下核投射が選択的な結合をとる場合に、基底核の病的状態時に観測されるリズミックなバースト活動が生じた。それ以外では、正常時のトニック活動を示した。 2.前述した様々な結合様式をもつ神経回路について調べたところ、細胞膜特性、シナプス伝達特性それぞれのみに、ドーパミン修飾作用を適用した場合には、前述のバースト活動の低減効果は限定的であったが、その両方への作用は、バースト活動をかなりの程度防ぐことが確認出来た。 3.パーキンソン病時に観測される皮質由来の低周波活動やβバンド活動の当該神経回路への影響を調べ、線条体ー淡蒼球経路の強い振動入力が病態を再現することが分かった。このことから、病態神経活動を防ぐには、線条体ー淡蒼球経路の活動レベルを抑制することが効果を持つと示唆している。
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