研究実績の概要 |
私たちは個々のニューロンごとに異なるプロトカドヘリン(Pcdh、細胞接着分子)が発現することを見出した (Esumi S et al, Nat Genet, 2005; Kaneko R et al, JBC, 2006, Hirano K, Kaneko R et al, Front Mol Neurosci, 2012)。本研究は、仮説「同じPcdhを発現するニューロン同士で神経回路を作る」の検証を目的とした。具体的には 、マウス小脳のバスケット細胞―プルキンエ細胞間の神経回路をモデル解析系とし、以下(i)(ii)を検討した。 (i) Pcdh欠損により神経回路の配線が異常になるか? (ii)神経回路を構成するニューロン群におけるPcdh発現は同一か? 最終年度は(1)バスケット細胞でのPcdh-γ欠損マウスの解析ならびに(2)ノックインマウスの作製を行なった。(1)小脳バスケット細胞でのPcdh-γ欠損マウス(Pcdh-γ flox; PV-Creマウス):小脳バスケット細胞におけるPcdh-γ欠損の影響を調べるため、PV-CreマウスとPcdh-γ floxマウスと交配した。本マウスの小脳を形態学的に解析した結果、小脳サイズの減少およびバスケット細胞数の減少を見いだした。これらの減少は生後2週齢から顕著であった。また、小脳機能への影響を調べるため、マウス個体レベルでの小脳学習課題を行った。その結果、瞬目反射条件学習では大きな異常は無かった。(2)ノックインマウスの作製:課題ii)神経回路を構成するニューロン群におけるPcdh発現は同一か? を調べるため、Pcdh遺伝子発現を可視化できるノックインマウスを作製した。Pcdh-b3発現を赤色蛍光にて観察できた。 研究期間全体を通じて、仮説「同じPcdhを発現するニューロン同士で神経回路を作る」を支持する結果が得られた。
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