研究課題
ポリグルタミン病である脊髄小脳失調症Ⅰ型(SCA1)は、原因遺伝子産物アタキシン1(Atxn1)におけるポリグルタミン鎖の異常伸長が原因であると考えられているが、その分子病態は未だ不明な点が多い。私たちのグループではオミックス研究より、SCA1病態に関与するタンパク質HMGB1, HPS70, Maxerなどを同定し報告してきた。本研究計画の目的は、Atxn1複合体をプロテオーム解析し、発症前の早期病態に関わる分子を同定および定量することである。プロテオーム解析からシステムバイオロジー解析までの方法論は本年度に報告した別プロジェクトの論文で確立した(Hum Mol Genet 2015, 24, 540-558)。しかしながら、プロテーム解析を行う画分の調製としてAtxn1を含む複合体を安定的に分画する方法が確立できていない。一方で、平成25年度までにAtxn1と相互作用する分子VCP(Nat Commun 2013, 4, 1816)とRPA1(Hum Mol Genet 2014, 23, 1345-1364)についての知見が得られたので報告した。さらに最終年度には、SCA1モデルマウスを用いたHMGB1の治療効果が得られたため、HMGB1を含むatxn1複合体という観点で研究を進めたが明確な結論は得られなかったが、治療効果とその分子メカニズムを報告した(EMBO Mol Med 2015, 7, 78-101)。この中でSCA1の新な病態メカニズムとしてミトコンドリアDNA障害を報告しており、今後Atxn1複合体を検討していく上ではミトコンドリアに関わる視点を加えること必要がある。今後の計画として、発症前の早期病態に関わるリン酸化シグナルを同定することと、本計画の第一目標であった、核、細胞質、ミトコンドリアといった各細胞画分におけるAtxn1複合体タンパク質の同定と早期SCA1病態における変化について解析を進めていきたい。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件)
Hum Mol Genet
巻: 24 ページ: 540-558
10.1093/hmg/ddu475
EMBO Mol Med
巻: 7 ページ: 78-101
10.15252/emmm.201404392
巻: 23 ページ: 1345-1364
10.1093/hmg/ddt524.