研究課題
本研究では、覚醒・睡眠の制御ペプチドであるオレキシンが呼吸および気道の開通性を調節する神経路に如何に作用しているかについて機能形態学的立場から追求することを目的とした。平成26年度は、成獣ラットの呼吸関連領域へ投射するKolliker-Fuse核(KF)ニューロンと接合するオレキシン陽性終末を電子顕微鏡下で詳細に解析した。その結果、オレキシン陽性終末は、腹側呼吸ニューロン群吻側部(rVRG)へ投射するKFニューロンの細胞体および樹状突起の間に、また、横隔神経核(PhN)および舌下神経核(HGN)へ投射するKFニューロンの樹状突起の間にシナプスを形成していた。次に、呼吸関連領域へ投射するKFニューロンにおけるオレキシンレセプターの発現について、逆行性標識法と蛍光免疫組織化学を併用して解析した。その結果、rVRGやPhNあるいはHGNに投射するKFニューロンにオレキシンレセプター2の発現が認められた。さらに、新生児期の結合腕傍核へオレキシンBを作用させた時の呼吸活動への影響を、脳幹―脊髄摘出標本を用いて解析した。オレキシンB (10 microM、0.1-1.0 microL)の結合腕傍核を含む領域への注入は、横隔神経で記録される呼吸性活動の頻度を強く促進した。また、舌下神経の呼吸性活動は横隔神経の活動と同時におきていた。以上の結果から、オレキシンは、オレキシンレセプター2を介してrVRGやPhNに投射するKFニューロンへ興奮性の影響を及ぼすことにより呼吸を促進し、それと同時にHGNへ投射するKFニューロンを興奮させることにより気道の開通性を維持していることが示唆された。また、オレキシンニューロンは、新生児期においても結合腕傍核へ投射することにより呼吸促進を引き起こしていることが示唆された。
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Journal of Comparative Neurology
巻: 523 ページ: 907-920
10.1002/cne.23720.