研究課題/領域番号 |
24500382
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大内 淑代 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00253229)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オプシン5 / 光受容 / 神経内分泌 / 視物質 / GPCR / opsin 5 / 発生分化 |
研究概要 |
鳥類や哺乳類(マウスなど)を用いて、2010年に同定した短波長光視物質オプシン5発現細胞の生体内での機能とその発生分化について研究を行っている。鳥類では哺乳類には存在しない型のオプシン5様視物質cOpn5L2が、眼や脳の視床下部に加え副腎髄質に発現し、光受容以外の活性化システムにより機能している可能性を示唆してきた (Ohuchi H et al., PLoS One. 2012;7(2):e315349)。本研究は、人工核酸切断酵素 Transcription Activator-Like Effector (TALE)ヌクレアーゼを用いた動物ゲノム改変法によりオプシン5発現細胞の機能と発生分化のしくみを明らかにすることを目的とした。本年度は、マウス個体レベルで有効なTALEヌクレアーゼ(TALEN)ベクターのバックボーンが明らかになり、オプシン5遺伝子を標的とするTALENベクターを構築した。さらに、非哺乳類での4つめのオプシン5様視物質を共同研究により発見(投稿準備中)、またマウスや霊長類の脳と眼におけるオプシン5の局在について明らかにした(投稿準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書では本年度中にTALENによるゲノム改変マウスまたはニワトリを作製し、解析に着手する予定であったので、その意味では達成が遅れている。それは、これまでわれわれが明らかにしてきた昆虫のゲノム改変に有効なTALEN(Watanabe T et al., Nat Commun. 2012;3:1017)が哺乳類や鳥類の個体でも有効かどうか不明であったからである。しかし、本年度はマウス個体で確実にノックアウトが得られるTALEN骨格が他の遺伝子を標的とした予備実験で明らかになり、その骨格を用いてのオプシン5遺伝子標的TALENベクターを作製するに至った。また、非哺乳類でのオプシン5様視物質の局在解析が進み(第14回国際組織細胞化学会議、第35回日本神経科学大会、第50回日本生物物理学会年会、第15回レチナール蛋白質国際会議で発表)マウスなど哺乳類の脳と眼におけるオプシン5発現細胞の局在について詳細に明らかにしてきているので、これらの成果が次年度以降のゲノム改変動物を用いたオプシン5発現細胞の機能解明および発生分化の研究に大いに貢献すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、マウス個体におけるゲノム改変が有効なTALENベクター骨格が年度後半まで定まらなかったため、マウス作出に至らず、次年度使用額347,665円が生じた。年度後半で定まったため、適するベクターの構築に至っている。次年度は、オプシン5ゲノム改変マウスの作出を急速に進める。TALENによるゲノム切断比率の測定はHEK293T細胞を用いたSingle Strand Annealing (SSA) assayにより行う。得られたTALENのmRNAを作製し、マウスの受精卵に顕微注入して、ノックアウトマウス系統を作製する。当該マウス系統の同定アッセイはPCR法により行う。ノックアウト動物は、光に応答した行動に表現型が出ると予想し、行動を詳細に調べる。一方、TALEN mRNAとともに、オプシン5遺伝子のゲノム断片を両端に持つレポーター遺伝子(EGFPまたはLuciferase)を含むプラスミドをマウス受精卵に導入し、レポーター遺伝子ノックインマウスの作出を行う。後者を用いて、脳あるいは網膜を単一細胞に分散させ、FACS (fluorescence activated cell sorting) 法を用いてオプシン5遺伝子発現細胞を分画する。各細胞からRNAを抽出し、次世代シークエンス法を用いて遺伝子発現プロファイリングを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額347,665円はゲノム改変マウスの作出に使用する。すなわち、受精卵へのインジェクションのための分子生物学試薬、ゲノム切断効率測定のための細胞生物学試薬などに用いる。その他の経費については、申請書のとおり、ゲノム改変動物の解析のための試薬プラスチック類、実験用動物、成果発表(研究代表者・研究協力者)、論文作成のための費用(翻訳・校閲)に用いる。
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