我々は、神経新生を亢進させたマウスで、抗うつ作用、抗不安作用、攻撃性の抑制など情動行動への有益な効果を見出している。本課題では、マウスの神経幹細胞に薬剤誘導型の遺伝子発現システムを導入し、他への影響を避けながら人為的に神経新生のみを促進させることにした。マウスに誘導剤を3週間投与したところ、海馬の顆粒細胞下帯などで顕著な神経新生の増加が見られ、システムが機能していることを確かめた。次に、動物を用いて行動解析を行ったところ、3週間の神経新生の促進では学習・記憶に有意な差は見られなかったが、抗不安様行動が観察された。この結果は、情動行動が神経新生に影響を受け易いことを示している。
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