(1) 移動経路過程における新生ニューロンの形態と血管パターニングの解析 ゼブラフィッシュ成魚の脳切片上で新生ニューロンの形態、血管、放射状グリアとの細胞間の関係について調べた。脳室壁に並んだ放射状グリア(神経幹細胞)から産生された新生ニューロンは、まず血管に伸びた放射状グリアの突起を伝って血管まで移動した。この時、新生ニューロンの長軸方向は、放射状グリアの突起に平行であり、血管に対しては直交していた。血管に到達後、新生ニューロンの長軸方向は血管に対して平行になり、血管を足場にして前方の嗅球へ移動していることがわかった。また、新生ニューロンが足場にしている血管は動脈マーカーを発現していることがわかった。 (2) 新生ニューロンと血管におけるSdf1/Cxcr4ケモカインシグナリングの解析 Sdf1の受容体であるCxcr4を欠損したゼブラフィッシュ変異体の成魚脳内では新生ニューロンが血管を足場にできず、嗅球に到達した新生ニューロンの数が減少した。Cxcr4受容体のアンタゴニスト(AMD3100)で処理した野生型の成魚脳内でも同様の異常を認めたことから、本ケモカインシグナリングは新生ニューロンが血管を足場にして移動するために必要であることがわかった。 (3) ゼブラフィッシュ成魚脳内のニューロン移動と血流の方向 脳血流を調べるために、血球を蛍光標識したトランスジェニックフィッシュTg(gata1:DsRed)と血管を蛍光標識したトランスジェニックフィッシュTg(fli1:GFP)を交配し、二重蛍光標識したトランスジェニックフィッシュTg(gata1:DsRed;fli1:GFP)を作成した。成魚まで飼育後、蛍光顕微鏡下で新生ニューロンが移動の際に足場にしている血管内の血流をイメージングしたところ、新生ニューロンの移動方向と血流の向きは同じであることがわかった。
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