研究課題/領域番号 |
24500385
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
高橋 弘雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20390685)
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研究分担者 |
吉原 誠一 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90360669)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 嗅球 / 介在ニューロン |
研究概要 |
匂いの情報処理を行う嗅球の介在ニューロンは、神経細胞としては例外的に、成体の脳内でも新生することが知られる。新たに生まれた細胞が、生涯に渡って嗅球の既存の神経回路へと組み込まれる。そこで本研究は、嗅球における血管と神経との相互作用に着目し、嗅球の神経回路新生を支える分子メカニズムの解明を目的とする。本年度は、新たに生まれた介在ニューロンが、嗅球内を目的地へと移動するメカニズムに着目して、研究を行った。 嗅球内を移動中の介在ニューロンと周囲の血管との関係を明らかとするため、血管内皮細胞が蛍光ラベルされた遺伝子改変マウスを用いて、新生介在ニューロンをエレクトロポレーションにより蛍光ラベルし、嗅球のスライス培養により経時変化を観察した。解析の結果、嗅球内を目的地に向けて移動する新生介在ニューロンには、①血管に沿って移動する細胞と、②血管から離れて移動する細胞がいることが明らかとなった。さらに血管に接している新生介在ニューロンの割合を定量した結果、嗅球の周辺部分と比較して、嗅球内側の顆粒細胞層では、血管に接する新生ニューロンの数が有意に少ないことが分かった。これらの結果から、嗅球内の位置や最終的な移動先の違いにより、介在ニューロンの移動方法が異なる可能性が示唆された。さらに、嗅球介在ニューロンの内、嗅球の内側で止まる顆粒細胞において、特異的に複数の受容体チロシンキナーゼEphAレセプターが発現することを見出した。これまでの解析から、EphAレセプターが顆粒細胞の移動の制御に重要な役割を果たすことを見出しており、今後、嗅球介在ニューロンの移動制御のメカニズムについて、さらに詳細な解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、これまであまり明らかとなっていなかった介在ニューロンの嗅球内での移動過程の一端が明らかとなり、移動制御に関わる候補分子も見出すことがきた。今後、さらに新生介在ニューロンの移動メカニズムについて、分子レベルで解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、介在ニューロンの嗅球内の移動に受容体チロシンキナーゼEphAファミリーが重要な役割を果たすことを明らかとした。今後さらに、新生介在ニューロンの移動におけるEphAレセプターの機能について、分子レベルで解析を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究から、嗅球介在ニューロンの移動を制御することが予想されるEphAレセプタ-やそのリガンドであるephrinについて、嗅球における発現パターンの詳細を明らかとする。また、新生介在ニューロンの移動におけるEphAシグナルの機能を明らかとするため、新生介在ニューロンで発現の見られたEphAやephrinを、エレクトロポレーション法による遺伝子導入法を用いて過剰発現させた場合の影響や、逆にshRNAを用いてノックダウンをした場合の影響について、詳細に検討していく予定である。
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