研究課題
匂いの情報処理を行う嗅球の介在ニューロンは、成体の脳内でも新生することが知られる。新たに生まれたニューロンが、生涯を通じて組み込まれることにより、嗅球の神経回路は維持されている。そこで、嗅球のニューロンと血管およびアストロサイトとの関係に注目し、成体の脳内では例外的に神経細胞の新生や、神経回路の再編成が起こる嗅球の “場のメカニズム”の解明を目的として、研究を行った。新生ニューロンの細胞移動のプロセスを明らかとするため、嗅球をスライス培養し、タイムラプスイメージングによる観察を行った。その結果、嗅覚内を目的地に向けて移動する新生介在ニューロンには、①血管に沿って移動する細胞と、②血管から離れて移動する細胞が存在することを明らかとした。新生介在ニューロンの移動には、複数のメカニズムが存在することが示唆された。興味深いことに、嗅球の内側で止まる顆粒細胞では、特異的に複数の受容体型チロシンキナーゼEphAレセプターが発現することを見出した。そこで、嗅球介在ニューロンの移動過程におけるEphシグナルの役割を明らかとするため、エレクトロポレーション法による遺伝子導入による解析を行った。その結果、EphAレセプターを過剰に発現させた新生介在ニューロンは、嗅球の内側で移動を止め、逆にリガンドであるephrinを過剰に発現させたニューロンは、嗅球の外側まで移動する傾向が見られた。以上の結果から、Ephシグナルが、新生介在ニューロンの移動の制御に重要な役割を果たすことが示唆された。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Electroporation Methods in Neuroscience
巻: 102 ページ: 93-103
Cell Reports
巻: 8 ページ: 843-857
10.1016/j.celrep.2014.06.056.
http://www.naramed-u.ac.jp/~amrc-lab1/tsuboi%20Lab3.html