研究課題/領域番号 |
24500386
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
神保 恵理子 (藤田 恵理子) 自治医科大学, 医学部, 講師 (20291651)
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研究分担者 |
桃井 隆 国際医療福祉大学, 大学院医療福祉学研究科, 教授 (40143507)
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キーワード | シナプス接着因子 / Cadm1 |
研究概要 |
自閉性障害は、脳発達障害であり、遺伝子の関与が示唆されている。しかしながら、原因候補とされる遺伝子が多く存在し、それらの統一的見解が未だ見出せていない。そこでこれまで見出してきた候補遺伝子のひとつであるCADM1遺伝子改変マウスおよび自閉症状が多く見られる結節性硬化症の原因遺伝子TSC1遺伝子改変マウスを用いて、自閉性障害と小胞体ストレス、小胞体ストレスによる膜輸送障害について解析することを目的としている。 Cadm1C末端の結合蛋白であるmulti-PDZ蛋白Mupp1のPDZ領域をリガンドとしたPull-down法を行い、複合体形成するシナプス受容体について解析したところ、これまで知られている分子以外の存在が明らかとなった。今後自閉性障害でのCadm1の変異の存在が、複合体に及ぼす影響(複合体形成不全)について調べる。 昨年度に行ったCadm1(Y251S)-ノックイン(KI)マウスの行動については、B6へのバッククロス後に再解析を行った。その結果、WTと比較し、KIマウスの社会行動性に障害が見られ、近年、自閉性障害の指標とされている超音波音声にも違いが見られた。また、Cadm1-KIマウスと、昨年度作製したCadm1 プロモーターの制御下でのGFPを発現させたトランスジェニックマウスとの交配によるCadm1陽性の神経回路網の可視化では、神経の成熟に問題があることが示された。 自閉性障害への小胞体ストレスの影響を脳・神経細胞での可視化するために、Cadm1-KIマウスとTSC-1/TSC-2を欠失したノックアウト(KO)マウスとの交配を進めており、マウス超音波音声に違いが見られた。次年度に遺伝型の異なるマウスを用いた組織学的および細胞学的解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PDZ領域をリガンドとしたPull-down法により、これまで知られていなかったCadm1と複合体構成分子が明らかとなった。遺伝子改変マウス同士の交配が進んでおり、B6へのバッククロス後のCadm1-KIマウスの社会行動性や超音波音声に変化が見られ、自閉性障害モデルとなり得ることが明らかとなった。また、Cadm1-KIマウスと、昨年度作製したCadm1 プロモーターの制御下でのGFPを発現させたトランスジェニックマウスとの交配では、Cadm1-GFP陽性の神経回路網の可視化させることができた。また、Cadm1-KIマウスとTSC-1/TSC-2-KOマウスとの交配を進めており、マウス超音波音声に違いが見られ、マウス組織や細胞の解析に期待が持てることから。
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今後の研究の推進方策 |
Cadm1(Y251S)-ノックイン(KI)、Cadm1-ノックアウト(KO)、Cadm1-GFP-トランスジェニックマウス(Tg)マウスおよびCadm1(Y251S)-GFP-Tgマウスの脳を用いて、自閉性障害と小胞体ストレスによる膜輸送障害とシナプスの機能障害との関係を解析し、自閉性障害の分子病態を明らかにする。 1)Y251S変異が及ぼす複合体形成への影響(複合体形成不全)を解析する。 2)マウスから取り出したGFP陽性神経細胞における変異蛋白やシナプス受容体複合体の膜輸送障害を可視化し、Cadm1シナプス機能障害を明らかにする。 機能障害の中でGain-of-functionとLoss-of-functionとの関係を解析する。 3) 交配させたCadm1-KI/TSC-1,-2欠損マウスから産出された様々な遺伝型のマウスを用いて、小胞体ストレスを可視化させ、変異Cadm1の影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度のマウスのバッククロスの遅延の影響により、次年度(本年度)分の実験時期や費用について、ずれが生じたことから。 1)遺伝子改変マウスの維持にかかる人件費、コントロールとする野生型マウスの購入に充てる。 2)マウス初代神経細胞培養および可視化に関連の試薬および器具等に充てる。
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