研究課題/領域番号 |
24500387
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
中尾 啓子 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70338185)
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研究分担者 |
伊丹 千晶 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90392430)
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キーワード | Notchシグナル / 活動依存的シグナル伝達 / 子宮内電気穿孔法 / 大脳皮質体性感覚野 / リモデリング |
研究概要 |
出生児の未成熟な脳は、環境から情報入力を受け神経活動依存的に回路が成熟する『臨界期』とよばれる時期を経て成人型の脳へと発達するが、そうした神経活動依存的に活性化されるシグナル伝達系の存在も次第に明らかになってきている。既に明らかになっているそうしたシグナル伝達系は、胚の初期発生過程においては、神経幹細胞の増殖や分化に関与することが知られていることから、我々は、体性感覚野の発達期に見られる回路形成をモデルとして、神経幹細胞の未分化性の維持に関与することが知られているNotchシグナル伝達系の神経細胞の活動依存的機能分化に関わるメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行っている。我々がかつてRBPJ-k依存的なNotchシグナルの活性をin vivoで検出できるレポーターを開発したが(Kohyama et al Dev. Biol. 2005 特許第4599610号(平成22年10月8日)、このレポーターを子宮内エレクトロポレーションによりに導入したところ、バレル形成期に第IV層の興奮性神経細胞において一過性にNotchシグナルの活性がRBP-Jk依存的に上昇していることを見いだしていたが、今回神経細胞の活性化を表す指標であるc-Fosの発現と完全に一致することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、Notchシグナルの体性感覚野におけるNotchシグナル活性の検出、体性感覚野におけるNotchシグナルの活性化のヒゲからの感覚入力依存性の解析、体性感覚野におけるNotchシグナルの活性化のバレルシステム形成における役割を解析するために、野生型のマウス胚に子宮内電気穿孔法を用いて遺伝子導入する実験と、Notchシグナルの活性をin vivoで視覚化できるレポータートランスジェニックマウスやNotchのコンディショナルノックアウトマウスを用いる実験とを平行して行う予定であった。 しかし、予定していたNotchシグナルの活性をin vivoで視覚化できるレポータートランスジェニックマウス(Mizutani et al Nature. (2007)が、もはや、レポーターの発現を検出することができなくなっていることが判明したため、3年目に国立遺伝学研究所の相賀先生が作成途上のレポーターマウスを頂いた上でバレル形成の後期過程に関わるNotchシグナルの機能を明らかにすることになった。
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今後の研究の推進方策 |
Notchシグナルの活性をin vivoで視覚化できるレポータートランスジェニックマウスを用いて一次体性感覚野第IV層興奮性神経細胞におけるNotchシグナルの活性化の詳細を解析し、活動依存的、リガンド依存的なNotchシグナルの活性化の詳細を明らかにする。次にNo tchシグナルの活動依存的活性化が体性感覚野バレルシステム形成において果たす役割をNotch shRNA型ベクターの子宮内エレクトロポレーション法により、または時期特異的または誘導的Notchのコンディショナルノックアウトマウスを用いることによりNotch遺伝子を 不活化し i)バレル内の神経細胞の形態(樹状突起の微細形態と軸索の投射パターン)ii)バレル構造の形成iii)バレル内の神経細胞の機能分化(成熟)に異常が生じるかどうかを免疫組織化学的、電気生理学的手法で解析する。 また、バレル構造の完成した成体においてNotch活性を抑制するために、成体マウスの大脳皮質体性感覚野バレル領域にγ-セクレターゼ阻害剤DAPTを数日間続けて注入し、その後マウス脳を取り出す。バレル構造が保たれているか、ここの興奮性、抑制性神経細胞の形態に異常があるかどうかを調べる。また、Notchのコンディショナルノックアウトマウス(floxed Notch alleleを用いCamKII-promoterの支配下でCre recombinaseを発現するLentivirus vectorを注入することで、成体マウス脳の体性感覚野においてNotch機能を阻害し、DAPT投与実験と同様な解析を行う。、成体マウス脳の体性感覚野においてNotch機能を阻害することによって、DAPT投与実験と同様な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初Jaxon Labから購入予定であったNotchのレポーターを発現するトランスジェニックマウスが、既にレポーターを発現しなくなっているとの情報を得て,国立遺伝学研究所の相賀先生が現在作成中のNotchレポーターを発現するトランスジェニックマウスをH26年度に譲渡していただいて解析することになった。そのため、マウスの飼育費や抗体の購入費等が平成26年度に持ち越しになったため。 平成26年度は、研究助手の雇用時間を一日2時間から5時間に延長し、これまでに作成したNotch遺伝子のレポーターやNotch遺伝子の機能を阻害したマウスの標本の解析を詳細に行うため人件費と抗体の購入に本科研費を使用する予定である。
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