研究課題/領域番号 |
24500390
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
藤川 顕寛 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 特別協力研究員 (50414016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リン酸化 / チロシンホスファターゼ / 覚せい剤 / 心的外傷後ストレス障害 / シナプス / 薬物依存 / シナプス / 神経 |
研究概要 |
本課題では、受容体型チロシンホスファターゼに属するPtprzが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の学習モデルとして用いられるマウスの恐怖記憶形成、また覚せい剤に対する嗜好・依存形成に関わる分子機構を明らかにする。さらに本分子のPTP活性を薬理学的に阻害することで恐怖記憶および覚せい剤依存が抑制されることの実証を目指す。 当該年度は、野生型マウスとPtprz欠損マウスの脳組織を用いて、我々が同定したPtprzの基質タンパク質分子のチロシンリン酸化状態が、学習刺激や覚せい剤刺激によって変動するのかを解析した。基質タンパク質の一つGit1に関しては基質サイトがリン酸化されることで分子機能に与える影響を見いだすことができた。 脳組織に発現するPtprzはコンドロイチン硫酸糖鎖で高度に修飾されたプロテオグリカンであるが、培養細胞株では、これまでプロテオグリカン型のPtrpz受容体を発現させることができず、培養細胞系を用いた分子機能解析の支障となってきた。当該年度、プロテオグリカン型のPtprzが発現する細胞株を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、恐怖学習刺激、覚せい剤投与後の脳内でPtprzの基質分子(Git1, p190RhoGAP, Magi2など)のチロシンリン酸化レベルを解析し、現在も継続している。基質分子の変異体の予定通り作出した。これまで機能不明であったGit1の基質サイトのリン酸化の役割を明らかにすることができた。Git1は膜輸送や細胞接着機構にも関わっており、脳神経以外の分野からも注目を集めている。明らかにしたGit1のリン酸化の意義は十分インパクトがあることから、先んじて論文発表する必要があると判断している。また当初計画には組み込んでいなかったが、プロテオグリカン型のPtprzを発現する細胞株を見いだした。これまでHEK293細胞株を用いて覚せい剤の標的ドーパミントランスポーター(DAT)に関する解析を移行することにした。 Git1のリン酸化の意義について研究を先行させることにしたため、当該年度の予定していた神経スパインの形態変化、培養神経細胞を用いた解析、シナプスへの基質分子の局在については、次年度以降に実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
Git1のチロシンリン酸化の機能的意義について論文発表を急ぐ。 恐怖記憶や覚せい剤依存形成に関わるPtprzの基質タンパク質分子のチロシンリン酸化状態の解析を継続し、神経スパインの形態変化、培養神経細胞を用いた解析、シナプスへの基質分子の局在についての評価を行う。 新たに見いだしたプロテオグリカン型Ptprzを発現する細胞株に標的候補分子を安定発現させた細胞株を取得し、これを用いてPtprzの基質分子を介した制御機構の詳細を解析する。 合成したPtprzの阻害剤を脳組織に局所注入し、恐怖記憶および覚せい剤依存に対する影響の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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