研究課題/領域番号 |
24500392
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古谷 裕 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (80392108)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テレンセファリン / ファゴサイトーシス / ビトロネクチン |
研究概要 |
これまでグリア細胞が死細胞のクリアランスに関わることはよく知られていたが、最近になり神経前駆細胞がアポトーシスした細胞をファゴサイトーシスすることが報告された。私は終脳特異的細胞接着分子テレンセファリンがビトロネクチンと強く結合することを見出した。死細胞を模倣したビトロネクチンコートビーズを培養海馬神経細胞に撒くとテレンセファリンの激しい集積を伴うファゴサイトーシス様の膜突出構造を作ることを明らかにした。これらのことから神経細胞によるアポトーシスした新生神経細胞のテレンセファリン依存的なクリアランス機構が存在すると考え、この分子機構と神経回路形成における役割を明らかにすることを目的とした。 死細胞を模倣したビトロネクチンコートビーズを用いてテレンセファリンが集積することを確かめたが、実際に死細胞をファゴサイトーシスするのか明らかにするために、培養海馬神経細胞にUV照射しアポトーシスを誘導した。これを蛍光色素でラベルし、培養海馬神経細胞に加えた。その結果、ビトロネクチンビーズと同様に死細胞は主に樹状突起に結合し、この周辺にはテレンセファリンが集積してくることが解った。また、テレンセファリン欠損マウスと野生型マウスより調整した培養海馬神経細胞を用いて、死細胞が樹状突起への結合する際のテレンセファリン依存性を確かめた。死細胞はテレンセファリン欠損神経細胞の樹状突起にはほとんど結合せず、テレンセファリン依存的に結合することが明らかとなった。 後期アポトーシス細胞にはビトロネクチンが結合することが報告されていたので、UV照射しアポトーシスを誘導した神経細胞にビトロネクチンが結合することを特異的抗体を用いて確かめた。従って、人工的なビトロネクチンコートビーズのみならず、死細胞もビトロネクチンを介してテレンセファリンの集積を引き起こすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工的なビトロネクチンコートビーズのみならず、アポトーシスまたはネクローシスした細胞もテレンセファリンの集積を引き起こすことを示しており、少し遅れてはいるが着実に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
タイムラプス解析により、神経細胞による死細胞のファゴサイトーシスの機構を明らかにする。また、これらの分子メカニズムを解明するために、ビトロネクチンコートしたビーズを神経細胞に加えた際に集ってくる分子を網羅的に解析する。このファゴサイトーシスの分子機構の解析をなるべく早く終了させ、この実験結果を用いたさらなる発展的な研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験計画がやや遅れているため、初年度から平成25年度に助成金を一部持ち越した。 25年度に初年度に計画していたタイムラプス解析を行うと共に、25年度に予定していた実験を行い、神経細胞によるファゴサイトーシスの分子機構を明らかにする。これらの実験のために必要な消耗品費として持ち越した助成金と25年度分として請求した助成金とを合わせて用いる。また、持ち越し分と25年度分の助成金を成果発表するための旅費と論文投稿費と別刷代として使用する。
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