研究課題
基盤研究(C)
高次機能を担う大脳皮質は、神経幹細胞が分裂しながら順次異なるサブタイプを産生することで6層の構造を形成するが、限られた数の神経幹細胞から多様なニューロンが産生される機構については不明な点が多い。本研究では、神経細胞分化において作動する遺伝子プログラムに焦点をあて、大脳皮質ニューロンの運命決定と層特異的分化を制御する分子の同定と機能解析により、大脳皮質の形成原理を理解することを目的としている。2012年度は、マウス大脳皮質の時系列の異なるニューロンの標識と操作を行うための手法を確立した。1)まず大脳皮質神経幹細胞に発現する転写因子の下流にtet-トランスアクチベータおよび誘導型Creリコンビナーゼ(CreER)を挿入したノックインマウスを用い、タモキシフェンとドキシサイクリンの投与により時期特異的レポーター遺伝子の活性化と層ニューロンの標識を行った。2)同様の条件でレポーター活性化後18~24時間の神経前駆細胞をFACSにて単離、マイクロアレイ解析を行い、各サンプルで有意に発現が高い遺伝子を網羅的に同定した。3)これら遺伝子のうち、大脳皮質2/3層および4層のニューロンに発現が高い遺伝子群について胎生14日目から生後7日齢までのマウスを用い、in situハイブリダイゼーションにより時空間的な発現パターンを検証した結果、神経前駆細胞と分化ニューロンでの層特異的発現を確認することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
2012年度は遺伝学的アプローチによる時系列の異なるニューロンの標識手法を確立し、これを用いて層特異的神経前駆細胞の単離とその遺伝子プロファイルの網羅的同定を進めた。さらにこれらの遺伝子については定量的PCRとin situハイブリダイゼーションにより層特異的な発現パターンを検証し、また複数の遺伝子については既に機能解析実験のためのコンストラクトを作製済みであり、計画は順調に進んでいるといえる。
2013年度は、スクリーニングにより得られた候補遺伝子について、層特異的ニューロンの分化決定を制御する遺伝子の絞り込みを行い、in vivoでの遺伝子機能欠失や遺伝子過剰発現実験により、大脳皮質神経細胞の分化に重要な転写因子の機能同定とその作用機構について詳細な解析を進める予定である。具体的には各層ニューロンの分化決定および軸索投射のガイダンス機能を子宮内電気穿孔法やスライス培養を用いて解析し、またニューロンの配置異常および樹状突起形態形成に関わる遺伝子について二光子イメージングにより生体脳での観察および定量化による評価を行う。また重要候補分子については遺伝学的手法により遺伝子欠損マウスやCre発現トランスジェニックマウスの作製を進める。
該当なし
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