研究課題
平成26年度は、大脳背側領域の神経前駆細胞に特異的に発現する核内因子であるDmrt3およびDmrta2の発現量と大脳神経前駆細胞の個性獲得における関連性を検討するため、細胞に可逆的に目的遺伝子を発現させる実験系であるTet-ONシステムを導入した。具体的には、Dmrt3遺伝子を発現させるためのTet-ONベクターを構築し、これらをマウスES細胞に導入して安定導入株を単離した。今回用いたTet-ONシステムのTet activatorであるrtTA2SM2の発現は、神経前駆細胞特異的な発現様式を示すNestinエンハンサーにより制御されるよう構築をデザインした。それにより、樹立したES細胞を各種神経分化誘導方により分化させ、かつテトラサイクリン誘導体であるドキシサイクリンを投与することにより、任意の時期に任意の量のDmrt3遺伝子を神経前駆細胞で発現させることが可能となった。上記の樹立ES細胞を、無血清凝集浮遊培養法(SFEBq)を用いて大脳皮質神経前駆細胞に分化誘導するとともにドキシサイクリンを投与し、Dmrt3遺伝子発現誘導が各種大脳領域マーカー遺伝子の発現に与える影響を解析した。その結果、Dmrt3遺伝子の発現量を段階的に増加させることにより、大脳皮質内側部に強く発現する各種遺伝子(Emx1, Emx2, Wnt3a, Wnt8b)の発現が有意に上昇した。以上の結果から、神経前駆細胞におけるDmrt3/Dmrta2の発現量が、大脳皮質形成プログラムにおける領域特異的な細胞運命の獲得に重要であることが明らかになった。
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Nucleic Acids Research
巻: 43(2) ページ: 775-786
10.1093/nar/gku1346