研究課題/領域番号 |
24500401
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
藤巻 則夫 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター 脳機能計測研究室, マネージャー (80359083)
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キーワード | 脳磁界 / 少数試行 / 脳活動源推定 / 言語意味処理 / 脳実形状 / シミュレーション |
研究概要 |
言語意味処理に関する脳活動源を推定することはヒトの認知機能を明らかにし、脳情報を応用するために重要である。従来のMEG言語意味研究においては、プライミング課題などを使い、先行・後続呈示の単語間の意味的距離に依存する脳活動を反映するN400成分を計測し、100試行程度の多数試行加算平均データから、脳活動源の位置と強度を推定する。 本研究では、意味的距離により脳活動源の位置が変わらず、強度のみ変化するという先行研究の示唆を前提として、位置を100試行加算平均データから推定するが、強度については、より少数(10程度)試行の加算平均データから推定することにより、脳活動の意味的距離などのパラメータ依存性を、限られた試行数のデータから詳細に得る解析手法を開発し、シミュレーションによる精度評価と実データへの適用を行う。 H24年度では、脳実形状や脳から生じる雑音磁場を使ったリアルなシミュレーションを行い、言語処理関連5部位が同時に活動する際の、意味処理に関わる側頭前部での活動について、強度変化が13%以上あれば(非加算データの信号雑音比が1の場合)、有意に検出できる(水準1%)ことが分かった。 H25年度には、前年度のシミュレーション結果に基づき、脳活動源強度の意味的距離依存性の検出レベルを、一般線形モデル(GLM)に基づいて評価したところ、例えば線形な依存性の場合、強度変化が49%以上あれば有意に検出できる結果を得た。従来手法(66%以上)より本手法の感度が高い。なおN400成分は、意味的な関連の有・無(意味的距離が近い/遠い)に対して、50%程度の変化が過去に報告されており、本結果は、本手法により脳活動源強度の意味的距離依存性を検出できる可能性を具体的に示したものである。H24およびH25年度の結果について、海外論文誌への投稿が採択となった(2014年3月24日づけ)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画における、実験データへの本手法の適用は遅れている。研究代表者が所属する組織において、H25年度に新研究センター(吹田)が開設され、年度内にMRIとMEGが導入され、その立ち上げや運用体制構築に忙殺され、なおかつ世の中のヘリウム不足のためH25年度中はMEGが稼働できず、これを使用する実験ができなかったためである。 しかしながら、その代わりに旧MEG装置(神戸)を使用した言語プライミング実験データを同僚より入手し、その前処理のプログラムを作成した。過去に取り扱った刺激呈示ごとのエポック切り出しデータではなく、のべ1時間以上にわたる連続的な計測生データであるため、epoch切り出し、アーティファクト除去、少数試行加算平均などの前処理の自作プログラム(matlab使用)を作成し、活動源推定のための前処理の準備を行った。これから本手法による活動源推定解析を適応する段階にある。 一方、脳活動源強度が意味的距離に対して、どのように、どの程度、依存すれば検出できるかについて、H24年度のシミュレーション結果をもとに理論的に検討し、前記「研究実績の概要」に記述した通りの予想を得た。これは、本来H26年度に行う予定であった統計的理論検討をH25年度において先行して行ったものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後、実データへの本手法の適用を進め、意味的距離依存性の検出を試みることにより、本解析手法の実証を行う。H25年度に行ったGLMモデルを使う統計手法は、本手法の実データへの適用において、意味的距離依存性が有意か否かの検定を行うために利用できる。 このようにして実データ適用に必要な処理を検討・実施する過程において本手法の最適化も目指す。さらに可能であれば、関連する新たな実験・解析を追加する。またこれらの結果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度にMEG実験ができなかったため、被験者謝金を使用せず、学会参加費の増分との相殺分を除く残金を繰り越すこととなった。 H25年度の残金をH26年度に繰り越し、被験者謝金等の実験・解析・発表等に活用したい。
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