研究実績の概要 |
H26年度は、本研究課題において開発する解析手法を、言語意味実験の脳磁界(MEG)計測データに適用した。これはプライム語(P)とターゲット語(T)を順に視覚呈示して、Tの意味処理を含む脳活動をMEG計測し、そのP依存性から意味処理を調べる実験である。一人の被験者から得られた約500試行のデータを使用し、PとTの意味的距離は行動実験により評価した。 本手法適用においては、まず被験者のMRI構造画像から、解析ソフトCURRYを使って脳表活動源候補位置約17,000点を抽出した。次に多数(441)試行の平均波形にL1ノルム最小法を使い、活動源位置52か所を得た。そして少数(10)試行平均波形34組について、二乗誤差最小法により各位置の活動強度を得た。刺激呈示から300-500 msの時間窓における活動強度の平均値を得て、一般線形モデルにより意味的距離依存性が統計的に有意かを判定した。なお瞬き等の雑音(アーチファクト)を含む試行を平均から除くためのしきい値や平均時間窓幅はデータに合わせて最適化した。その結果、予想した左側頭前上部において活動強度が意味的距離に比例して大きくなること(有意水準5%)がわかり、本手法の有用性が示された。 全期間をまとめると、意味的距離などの刺激パラメータによって、位置が変わらず、強度のみが変わる脳活動について、多数試行平均波形から位置を決め、少数試行平均波形ごとに強度を決めることにより、限られた試行数のMEG計測データから、刺激パラメータ依存性を抽出する手法を開発した。H24年度にシミュレーションによる精度評価を行い、H25年度に統計処理方法を開発した。H26年度は実データに適用し、脳活動の意味的距離依存性が得られた。 以上、少数試行データの解析手法を開発し、実データに応用できることを示した。この成果はBrain Topography誌に掲載された。
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