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2012 年度 実施状況報告書

音声発達の臨界期を制御する神経メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24500403
研究種目

基盤研究(C)

研究機関沖縄科学技術大学院大学

研究代表者

杉山 陽子(矢崎陽子)  沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 准教授 (00317512)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード臨界期 / 可塑性 / 聴覚 / ソングバード / 神経生物学
研究概要

本年度はキンカチョウの歌学習に伴う抑制性細胞の可塑的変化を明らかにすることにより、臨界期を制御する神経メカニズムを明らかにするため、感覚運動領域である終脳HVC核、特にその中の抑制性神経細胞に注目し研究を行う予定であったが、その後に発表された論文(Sanes DH, Woolley SM、Neuron2011)の内容を検証した結果、当初の研究計画を変更し1)HVC核に入力する大脳聴覚連合野における聴覚応答を明らかにすること、さらに来年度以降、この領域の歌学習における役割を明らかにするため2)脳内の特定の領域における神経活動を制御する方法の開発を行った。
聴覚連合野の神経細胞はこれまでの研究から、学習した親の歌を聞かせることによりcFOSの発現が観察されるなど歌学習によって記憶が形成される領域と考えられているが、神経生理学的報告はなく、学習臨界期の形成に関わる報告もない。そこで本年度はまず、この領域の神経細胞に学習した歌の記憶と考えられる親の歌に対する選択的な聴覚応答があるかどうか調べたところ、数日間だけ父親の歌を聴いただけの雛鳥のでも、聴覚連合野の限られた領域に父親の歌に特異的な聴覚反応が見られるようになることが明らかになった。
また来年度にはこの領域の神経活動の歌学習における役割を明らかにするための研究を行う予定であるが、その為には直接、神経細胞の活動を制御できるシステムが有用である。そこでウィルスベクターを用いて、特定の脳内の領域にインベルメクチン作動性Clチャンネルを発現させ薬理学的に可逆的に神経活動を抑制することシステムをキンカチョウにおいて確立した。系の確立は領域の役割が明らかになっている運動神経核、RA核において行ったが、インベルメクチンの投与により可逆的に神経活動の変化、またそれによる行動の変化が起きることがそれぞれin vitro、 in vivoで確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は当初の研究計画を変更し、研究の標的を大脳聴覚連合野に絞り研究を行った。当初の目的の脳内領域と異なり、これまで、研究報告の少ない領域であったため、その聴覚応答、歌学習における役割などその基本的な研究から行う必要があったが、本年度の研究において雛鳥において聴覚学習を行うことにより、学習した歌に対する聴覚応答が見られるようになることが明らかになった。つまり学習臨界期の感覚刺激に伴い脳内のどの領域に、どの様な変化が見られるか、という臨界期可塑性の原点となるべき現象を見出すことが出来た。
さらにこの可塑性の学習における役割を明らかにするための手法として、ウィルスベクターを用いたインベルメクチン作動性Clチャンネルの発現による神経活動の可逆的抑制の系をキンカチョウにおいて始めて確立できた。この系の本研究に対する応用は来年度行う予定であるが、有用な方法であるため研究の目的達成に大いに役立つことが期待される。
これらの結果はともに来年度、学会発表を行う予定になっている。

今後の研究の推進方策

来年度においては「トリの歌学習を用いて‘なぜ生後発達の特定の時期にのみ高い学習能力を持つのか’臨界期の神経メカニズムを明らかにする。」という当初の目的を達成すべく研究を行う。特に、1)本年度の結果から得られた聴覚連合野における親鳥の歌に対する特異的な聴覚応答と歌学習の関わりを本年度に確立されたインベルメクチン作動性Clチャンネルの発現による神経活動の可逆的抑制の系を用いて明らかにし、2)さらに当初の研究計画にあるように他のシステムでは‘抑制性神経機構の発達による臨界期の決定’というアイディアが提唱されているため、この聴覚連合野における抑制性神経細胞の発達、特異的な歌選択制における役割、その可塑性などを明らかにしていく。

次年度の研究費の使用計画

本年度は上記のように研究計画に変更があり、新たな研究計画の有用性を見極めるため、年度末までに予算の遂行が行えなかった。しかし年度末になって上記のように新たな研究計画で順調にデータが出ることが予測できたため、来年度においては、新たな研究計画に沿って(結果として必要な研究機器に変更はない)研究を進めていく方針であり、来年度すぐに予算を執行する予定である。また、本年度の研究から確立されたあらたな研究手法も取り入れ、当初の研究計画にはなかったレベルの研究まで進める予定である。

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公開日: 2014-07-24  

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