研究課題/領域番号 |
24500404
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
吉田 成孝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20230740)
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研究分担者 |
板東 良雄 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20344575)
田中 達英 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80567032)
村上 公一 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90400085)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脱髄 / カリクレイン / 走査型電子顕微鏡 / プロテアーゼ |
研究概要 |
多発性硬化症をはじめとする脱髄疾患は、細胞浸潤とそれに伴う炎症性サイトカインにより、オリゴデンドロサイトが障害を受けることにより髄鞘の変性と貪食が生じると考えられている。我々は、オスミウム浸軟処理試料を走査型電子顕微鏡で観察することにより、マウスの多発性硬化症モデルでは、炎症が生じる前に髄鞘が変化を受けている可能性を見出した。 そこで、今年度の研究では、髄鞘変化から脱髄への経過を明らかとすることを目的とする。 1.EAE作成と走査電子顕微鏡による観察 マウスに対し、MOGペプチド免疫注射により、EAEを生じさせた。免疫注射後、5,7,10,14,21,42,70日後にマウスを灌流固定後、脊髄を採取した。オスミウム浸軟SEM法で、髄鞘の変化の観察をおこなった。その結果、症状が出現する10日後に於いて、リンパ球等の浸潤が認められない部位において、すでに髄鞘の異常が認められることが明らかとなった。症状がピークとなる21日後には髄鞘の異常な変化は進むが、軸索に髄鞘がなくなる脱髄の像は見られなかった。さらに、42日後には症状は軽快したが、髄鞘以上はむしろ進行した。 2.免疫組織化学および免疫電顕法(透過型電子顕微鏡による観察)により、髄鞘変化とプロテアーゼ発現の関連を観察した。その結果、KLK6はリンパ球などの細胞浸潤が生じている部位の周辺に発現上昇していることが明らかとなった。包埋前免疫電顕法による染色ではオリゴデンドロサイトの細胞体のみが染色された。 3.EAEマウスの脊髄において、液性免疫が作用している可能性をみるために、免疫グロブリンを染色したところ、反応が見られ、液性免疫のはたらきが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であるEAE作成と光学および電子顕微鏡による観察は計画通りに行われ、重要な所見が得られた。年度当初は、初代培養細胞にEAEの血清投与を計画したが、それよりも直接的な液性免疫の関与を検討するために、組織内での免疫グロブリンの染色を行った。その結果、有望な所見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄損傷後の髄鞘変化の経時的変化を研究する。損傷部位より遠隔の髄鞘変化を検討することにより、髄鞘変化が軸索の変化により生じるものかが明らかとなる。 1.マウスに対し、脊髄損傷を行う。脊髄損傷はTh8脊髄に荷重を落下することにより行う。この手技は多くの経験があり、安定した結果を得ている。 2.処置後の髄鞘の経時的変化をオスミウム浸軟SEM法により観察する。 3.免疫組織化学および免疫電顕法により、髄鞘変化とプロテアーゼ発現の関連を観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物、抗体、電子顕微鏡試料作成の消耗品を含む物品費に1,100,000円 神経科学会・神経化学学会合同大会などでの成果発表の旅費に200,000円を支出予定である。
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