研究課題/領域番号 |
24500406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
西田 有 三重大学, 生命科学研究支援センター, 助教 (50287463)
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研究分担者 |
榊原 伸一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70337369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質翻訳後修飾 / SUMO化 / ユビキチン化 / パーキンソン病 |
研究概要 |
本研究はパーキンソン病に関わる遺伝子産物、特に転写因子のSUMO化を解析し、その機能とパーキンソン病発症へのSUMO化の関与を解明することを目指している。平成24年度は家族性パーキンソン病の原因遺伝子parkinの産物であるユビキチンリガーゼparkinの基質として同定された新規転写抑制因子PARIS/ZNF746のSUMO化の制御に関わる因子、特にSUMOリガーゼと脱SUMO化酵素の同定を試みた。その結果既知のSUMOリガーゼであるPARISファミリータンパク質は顕著なSUMO化促進を示さず、ヒストン脱アセチル化酵素HDAC2,4は弱い促進作用を示した。KAP-1はKRABドメイン結合タンパク質でそのPHDドメイン依存的に自己SUMO化のSUMOリガーゼ活性を示すことが知られているが、PARISに対するSUMOリガーゼ活性を示さなかった。脱SUMO化酵素はSENP1,2が脱SUMO化を促進した。SUMO化はユビキチン化の阻害により標的タンパク質のプロテアソーム分解を抑制する場合がある。そこで野生型とSUMO化されない変異型PARISのユビキチン化とその細胞内での安定性を培養細胞発現系により調べたところ違いは認められなかった。PARISはPGC-1α遺伝子プロモーター上のinsulin応答配列(IRS)へ結合し転写を抑制する。parkinの変異によりPARISの過剰発現され、PGC-1α とPGC-1α の標的遺伝子の発現が抑制されることがパーキンソン病発症のメカニズムの一つと考えられている。 SUMO化されない変異型PARISは野生型に比べPGC-1α遺伝子プロモーターの転写抑制効果が減少することを明らかにした。さらに詳細な解析を行った結果、PARISタンパク質のN末端領域とSUMO化はPARISの内在的な転写活性化能を抑制している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画については概ね計画通りの実験を行い、PARISのSUMO化とPARISタンパク質のN末端領域が協調的にPARISの内在的な転写活性化能を抑制し転写抑制能を発揮させている可能性を示した。ここまでで得られた成果は第35回日本分子生物学会年会において発表し、現在論文を作成中である。しかしながら、SUMO化を介した転写制御メカニズムに関わる因子は未だ不明である。さらにPARISの生理的機能、特にパーキンソン病発症とSUMO化の関係について明らかに関係があると結論付ける結果は現在まで得られておらず今後の研究課題として残されている。またノックインマウスの作製は様々な理由により当初の研究計画からやや遅れているが今後も継続して研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に平成24年度の研究計画を今後も継続して研究を進める予定である。PARISのSUMO化による転写制御解析ではKAP-1以外の結合タンパク質の関与が考えられることから、これらを同定しその機能を解析する。PARISのSUMO化が神経変性とパーキンソン病発症へ与える生理的影響の解析として、初めに神経細胞に野生型またはSUMO化されない変異型PARISを強制発現した細胞の影響を調べ、さらにマウス個体の脳へ直接トランスフェクションしin vivoでの影響を調べる予定である。ノックインマウスの作製も継続して進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
タンパク質の発現・精製、機能解析のための変異実験、プロモーター・レポーターアッセイ、その他様々なアッセイ等に必要な分子生物実験試薬、生化学実験試薬、細胞培養用器具、プラスチック器具、さらに個体でのSUMO化の機能解析に必要な実験動物とその飼育費用、組換えマウス作製用試薬などの消耗品費として1,320千円を使用する。また国内学会での研究成果発表および研究打合わせのための国内旅費として100千円、その他として論文投稿のための英文校閲代、投稿論文が受理された際の論文掲載料として80千円使用する予定である。
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