研究課題/領域番号 |
24500406
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
西田 有 三重大学, 生命科学研究支援センター, 助教 (50287463)
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研究分担者 |
榊原 伸一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70337369)
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キーワード | タンパク質翻訳後修飾 / SUMO化 / ユビキチン化 / パーキンソン病 |
研究概要 |
平成25年度は常染色体劣性若年性パーキンソン病の原因遺伝子PARK2の産物であるユビキチンリガーゼparkinの基質として同定された新規転写抑制因子PARIS/ZNF746のSUMO化の制御に関わる因子と転写活性抑制メカニズムの解析を行った。その結果、転写抑制に関わるポリコーム群タンパク質の一つPc2/CBX4が強いSUMO化促進作用を示した。Pc2/CBX4はヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞におけるPGC-1α遺伝子プロモーターの活性抑制を促進したが、その効果はPARISのSUMO化依存的ではなかった。SUMO化欠損PARIS変異体はSH-SY5Y細胞においてPGC-1α遺伝子プロモーターの転写活性抑制効果が減少した。しかしSUMO-1は転写活性化に働き、逆に脱SUMO化酵素SENP1は活性抑制に働いた。またHEK293細胞では野生型PARISはPGC-1α遺伝子プロモーターを活性化しSUMO化欠損変異は転写抑制を示した。次に転写レポーターシステムにLexA-GAL4プロモーターを使用しPARISの転写抑制を解析した結果、SH-SY5Y細胞、HEK293細胞において野生型PARISは転写抑制に働き、SUMO化欠損変異体では転写の亢進が認められた。さらにPARISのKRABドメインの機能を解析したところ、KRABドメインの欠損によりいずれの細胞種においてもPGC-1α遺伝子プロモーターの転写は顕著に活性化され、さらにSUMO化欠損変異を導入するとこの転写活性化は認められなくなり逆に転写抑制を示した。しかしLexA-GAL4プロモーターにおいてはKRABドメインの欠損は転写に影響を与えなかった。以上の結果はPARISの転写活性調節はプロモーター配列と細胞種に依存し、SUMO化は正負両方の調節に機能している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の計画において、PARISの転写抑制制御に関する研究については概ね計画通りの実験を行い、PARISの新たなSUMOリガーゼの同定し、さらにPARISは潜在的な転写活性能を持ちKRABドメインとSUMO化がその調節に働いている可能性を示した。ここまでで得られた成果は日本農芸化学会2014年度大会において発表し、現在論文を作成中である。しかしながら、SUMO化を介した転写制御メカニズムに関わる因子は未だ不明である。さらにPARISの生理的機能、特にパーキンソン病発症とSUMO化の関係について明らかに関係があると結論付ける結果は現在まで得られておらず今後の研究課題として残されている。またノックインマウスの作製は様々な理由により当初の研究計画からやや遅れているが、今後も可能な限り継続して研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に平成25年度の研究計画を今後も継続して研究を進める予定である。PARISのPGC-1α遺伝子プロモーターの転写抑制にはKRABドメインとSUMO化が重要な役割を担っていることが明らかとなり、KAP-1や新規のKRABドメイン結合タンパク質がPARISの転写制御メカニズムに重要と考えられることから、これらを同定しその機能を解析する。PARISのSUMO化が神経変性とパーキンソン病発症へ与える生理的影響の解析として、マウス神経細胞またはマウス個体の脳へ直接トランスフェクションするin vivoの解析を行い解析を進めているところであり、今後もさらなる解析を行う。ノックインマウスの作製も継続して進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは全て研究分担者の使用予定額であったが、平成25年度は研究分担者が所属研究機関における教育業務で多忙であったため、やや研究の進行が遅れたことによる。 使用計画に大きな変更点はありません。 翌年度分と合わせて研究に使用します。
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