研究実績の概要 |
本研究はパーキンソン病に関わる転写因子のSUMO化を解析し、その機能とパーキンソン病発症へのSUMO化の関与を解明することを目的とした。 平成26年度はユビキチンリガーゼparkinの基質として同定された新規転写抑制因子PARISのSUMO化の制御に関わる新たなSUMOリガーゼの同定を試み、特にSUMO2/3化を顕著に亢進するSUMOリガーゼPIASyを同定した。PIASyはPARISタンパク質の中央ドメインへ結合し、核内で共局在を示した。ヒト神経芽細胞腫SH-SY5細胞におけるPIASyのノックダウンはPGC-1α遺伝子プロモーターの活性を亢進し、PIASyの過剰発現はこれを強く抑制したことからPIASyとPARISの相互作用、SUMO化促進活性がPGC-1α遺伝子の発現抑制に重要な働きを持つことが示唆された。 PARISはPGC-1αとその標的遺伝子の発現を抑制することによりドーパミン神経の変性に深く関与していることが示唆されていたが、PARISの転写抑制の制御機構はほとんど明らかにされていなかった。我々は本研究においてPARISがSUMO化されることを発見し、SUMO化を制御する因子(Pc2/CBX4, PIASy, SENP1)を同定しそれらがPARISの転写抑制活性に与える影響を解析した。その結果PARISのSUMO化依存的、非依存的な転写抑制活性を明らかにした。またPARISは潜在的な転写活性化能を有し、SUMO化がその活性化にも関与している結果を得た。さらにPARISの転写活性の正負はプロモーターや細胞種に依存することも明らかにした。またPARISのSUMO化はparkinによるユビキチン化には影響を与えなかった。 以上の本研究の結果はパーキンソン病発症メカニズムにおけるSUMO化の重要性を示唆したが、その生理的機能の解明には至らず、今後の研究課題として残った。
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