研究課題/領域番号 |
24500407
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
松尾 明典 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 助教 (20324585)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アセチルコリン合成酵素 / コリントランスポーター / DNAアレー / NELL2 |
研究概要 |
アセチルコリン合成酵素(ChAT)の細胞核内機能の解明のために、アセチルコリン合成酵素によるコリントランスポーターの転写誘導にプロモーター部位の状態がどう関わっているかを検討した。アセチルコリン合成酵素がプロモーター付近に結合するかはクロマチン沈降法ではうまく絞り込むことが出来なかったため、アセチルコリン合成酵素強制発現の有無によるコリントランスポーター遺伝子上流のGpCアイランドのDNAメチル化の検討に切り替えた。具体的には、バイサルファイトシークエンス法を用いて、アセチルコリン合成酵素の強制発現の有無によるメチル化を比較した。ChAT-GFPとGFP安定発現のSH-SY5Yで比較したところ、DNAのメチル化はいずれも少なく、SH-SY5Yでは、コリントランスポーター遺伝子は、もともと開いた状態にあるものと考えられた。アセチルコリン合成酵素の強制発現では、DNAメチル化は変化していないという結果であった。 コリントランスポーター転写誘導が、多段階でおこっている可能性が考えられ、ChATの発現の影響化にある遺伝子を、Tet-on ChAT発現SH-SY5Yを材料に、ドキシサイクリンの有無で回収したRNAを用いて、DNAアレーで検討した。得られた候補遺伝子ついて、リアルタイムPCRを行ったところ、アセチルコリン合成酵素発現で確実に増加したのが、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびc-FOS,一方減少していたのは、NELL2というprotein kinase C-binding proteinであった。とくにNELL2についてはこれまで知見が少なく、抗体を入手して脳内のChATとの共存状態を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アセチルコリン合成酵素強制発現とコリントランスポーターの転写誘導の直接の機構は解明できていない。アセチルコリン合成酵素のDNAへの結合を証明できていないため、当初の目標であるアセチルコリン合成酵素とコリントランスポーターのプロモーターの直接の関連は解明できなかった。一方でアセチルコリン合成酵素強制発現によるコリントランスポーターの遺伝子発現増加にはのDNAメチル化が関与していないことを示した。アセチルコリンを介した作用の有無に関しては、すでに活性を阻害したクローンで現象が起きていないことより、アセチルコリンを介しているものと推測した。AChEのノックダウンは有意の結果が出なかった。DNAアレーによるスクリーニングで、アセチルコリン合成酵素強制発現の結果、コリントランスポーター以外に影響を受ける遺伝子を見いだした。抑制される新規変動遺伝子NELL2を検出したことより新たな展開が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
NELL2とアセチルコリン合成酵素に注目して、相互作用を細胞化学的に検討したい。25年度に研究代表者の所属施設の変更があり、本計画の実施に生化学実験や細胞培養の環境整備が必要になるため、まずは施行可能なラット脳の免疫組織化学をもちいた実験を主におこなう予定である。すでに数種類のNELL2特異的抗体を入手している。また、初年度スクリーニングで候補に挙がった遺伝子が少ないため、細胞培養の環境を整えて、再度アセチルコリン合成酵素強制発現により影響をうける遺伝子の再検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
Tet-on細胞系の構築で、アセチルコリン合成酵素の核内移行の有無の違いのある安定株の確立が困難で、Tet-on細胞系を用いた実験では、アセチルコリン合成酵素の発現の有無の比較のためのDNAアレーにとどまり、核内移行の有無による比較は行えなかった。従って、下流のリアルタイムPCRの解析も含めて、施行回数が予定より減ったため、研究費に繰り越しが生じた。研究代表者の研究機関異動による研究環境の変化に対応して、細胞培養関連の備品、PCR解析用備品の購入に充てたいと考える。また、研究遂行上必要があれば、当初計上していなかった実験補助員の雇用のために支出することも考慮する。
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