研究課題
基盤研究(C)
我々は先行研究にて、parvalbumin (PV) 発現細胞の樹状突起と細胞体を完全に可視化する遺伝子改変マウスの作出に成功した。このマウスを用いて免疫蛍光染色を行い、抑制性シナプス前マーカー・抑制性シナプス後マーカーを可視化した。共焦点顕微鏡にて3次元スタック画像を取得し、PV細胞へのシナプス入力様式を、第一次体性感覚野において定量的に解析した。なお、抑制性シナプス後マーカーにはgephyrinを使用したが、電子顕微鏡下で、抑制性シナプス後部に局在することを確認している。(I) まずはvesicular GABA transporterをシナプス前マーカーとして使用し、全抑制性入力を解析した。 (II) 次に、皮質抑制性神経細胞の約半分を占めるPV、20から30%を占めるsomatostatin (SOM)、10%弱を占めるvasoactive intestinal peptide (VIP) 発現細胞の軸索終末を可視化し、PV細胞への抑制性入力を解析した。PV、SOM共に、細胞体へのシナプス入力量は少なく、樹上突起を好む傾向が認められた。一方、VIP入力は細胞体を好み、樹状突起への入力は少なかった。以上より、PV細胞の樹状突起は抑制性入力の約60%をPV細胞から、細胞体は約62%をVIP細胞から受けることが分かった。すなわち、PV細胞は樹状突起・細胞体という2つのコンパートメントにおいて、抑制性入力様式が異なることが明らかとなった。現在は第一次運動野において、同様の解析を進め、上記所見の普遍性について検討している。さらに、SOM細胞・VIP細胞へのシナプス入力様式を明らかにすべく、方法論の開発を現在進めている。
2: おおむね順調に進展している
(I-a) PV発現細胞への入力特性前述の通り、第一次体性感覚野におけるシナプス入力特性の解析は終了した。現在は第一次運動野において同様の解析を進めている。(I-b,c) SOMもしくはVIP発現細胞への入力特性SOMもしくはVIP発現細胞特異的に、組換え酵素であるCreを発現するノックインマウスにウイルスベクターを注入し、ゴルジ染色様に可視化することに成功している。上記 (I-a)と同様に、各種シナプス入力を定量的に解析していくが、現在はその解析法を検討している段階である。(II) 皮質抑制性神経細胞の出力特性遺伝子改変マウスを用い、PV発現細胞集団をゴルジ染色様に可視化する。そしてPV、SOM、VIP発現細胞特異的にCreを発現する遺伝子改変マウス、Cre存在下で膜移行シグナル付き赤色蛍光タンパク (pal-RFP) を発現するウイルスベクターを用い、単一神経細胞を軸索末端まで標識する。そして、単一の皮質抑制細胞がシナプス入力するPV発現細胞の数・三次元分布を明らかとする。現在は、注入時のウイルスベクター濃度を検討中である。
(I-a) PV発現細胞への入力特性H25年度中に解析を終える予定である。(I-b,c) SOMもしくはVIP発現細胞への入力特性SOMもしくはVIP発現細胞をウイルスベクターで特異的に標識することに成功している。現在は解析法を検討中であり、H25年度中に確立する。(II) 皮質抑制性神経細胞の出力特性現在は、注入時のウイルスベクター濃度を検討中である。濃度決定後、解析手法の検討を行う。Scale・CLARITYなどの手法を用いることも検討する。
昨年度と同様、主に消耗品(ウイルスベクター作成・免疫組織化学)と遺伝子改変マウス管理費に充てる予定である。備品等の購入は予定していない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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