てんかん症状は、大脳皮質ニューロンが過剰に発火することで生じる反復性の発作現象である。先行研究から、(1)脳の発達過程における軸索や樹状突起の異常伸長が原因で異所的な神経回路が形成されること、あるいは(2)ニューロンの細胞内カルシウム濃度が変調し、その信号伝達経路が入力信号に過敏に応答して高頻度発火が誘導されることが原因であると推定されている。しかし、未だにその成因は十分に解明されているとは言えない。 我々の研究グループは、ショウジョウバエをモデル系にして、樹状突起の正常な伸長に必須なシグナル伝達系を明らかにしてきた。7回膜貫通型カドヘリンFlamingoと、その細胞内結合タンパク質Espinas (Esn) が協働的に機能して樹状突起同士の交差を防いでおり、その結果、樹状突起は空間に均一な密度で広がっていくことが可能になる。ごく最近になって、ヒトおよびマウスのEsnホモログが、家族性てんかんの責任遺伝子の一つであることが報告された。一方で、我々は、Esn変異体で生得的な行動パターンが異常になることを発見していた。 Esn結合因子として同定した分子群の一つ、細胞内足場タンパク質Neurochondrin (Ncd) について、RNA干渉法による機能阻害下での表現型解析を行ったところ、Esn変異体と同様の樹状突起交差異常を認めた。さらに、Cas9/CRISPR法により点突然変異を作出し、これでも同様の表現型以上を確認した。現在、論文投稿の準備中である。
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