研究課題/領域番号 |
24500412
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
安井 幸彦 島根大学, 医学部, 教授 (30174501)
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研究分担者 |
津森 登志子 島根大学, 医学部, 准教授 (30217377)
横田 茂文 島根大学, 医学部, 助教 (50294369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オレキシンニューロン / 視床下部 / 結合腕傍核 / 脊髄後角 / 侵害刺激 / Fos 蛋白 / コレラ毒Bサブユニット |
研究概要 |
本研究では、痛み刺激による覚醒反応の神経機構を形態学的立場から明らかにすることを目的とし、本年度は視床下部オレキシンニューロン分布領域に投射する外側結合腕傍核ニューロンの痛覚刺激による活性化の解析を行った。ラット視床下部オレキシンニューロン分布領域へのコレラトキシンBサブユニット(CTb)注入後、1週間して前肢足底部あるいは上唇と下唇へのホルマリン注入を行い、結合腕傍核にて Fos 蛋白陽性ニューロンと CTb 陽性ニューロンの分布ならびに両者の異同を検索した。その結果、前肢足底部へのホルマリン注入例では外側結合腕傍核に多数の、内側結合腕傍核に中等度のFos 蛋白陽性ニューロンが、外側結合腕傍核に多数の、内側結合腕傍核に少数の CTb 陽性ニューロンが認められた。そして、Fos 蛋白と CTb によって二重標識されたニューロンが外側結合腕傍核の吻尾にわたって、対照群(ホルマリンの代わりに生理食塩水を注入)よりも明らかに多く認められた。上唇と下唇へのホルマリン注入例では、Fos 蛋白陽性ニューロンおよび二重標識されたニューロンの数は前肢足底部例に比べてやや少なかったが、ほぼ同様の分布様態を示した。以上の結果から、視床下部オレキシンニューロン分布領域に投射する外側結合腕傍核ニューロンは侵害刺激によって活性化されることが明らかとなった。なお、痛覚刺激によって活性化されたオレキシンニューロンへの外側結合腕傍核からの入力解析についてはまだ十分な結果が得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に計画した実験のうち、視床下部オレキシンニューロン分布領域に投射する外側結合腕傍核ニューロンの痛覚刺激による活性化の解析については、研究実績の概要に記載したように概ね順調に実験結果を得られた。しかし、もう一つの実験である痛覚刺激によって活性化されたオレキシンニューロンへの外側結合腕傍核からの入力解析については、まだ十分な結果が得られていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の計画で遅れていた実験、すなわち痛覚刺激によって活性化し、Fos 蛋白を発現したオレキシンニューロンへの外側結合腕傍核からの入力様式に関する光学顕微鏡的解析を本年度も続けて行う。さらに、Fos 蛋白陽性オレキシンニューロンと順行性標識した外側結合腕傍核線維とのシナプス構築を電子顕微鏡にて解析する。 次に、視床下部オレキシンニューロン分布域に投射する外側結合腕傍核ニューロンと脊髄後角線維との接合様式を、順行性および逆行性標識法の併用によって光学顕微鏡および電子顕微鏡レベルで解析する。 最後に、オレキシンニューロンへの入力路における外側結合腕傍核ニューロンおよび脊髄後角ニューロンの伝達物質がグルタミン酸であることを、逆行性標識法とグルタミン酸トランスポーター mRNA に対する in situ hybridization あるいは順行性標識法とグルタミン酸トランスポーターに対する免疫組織化学の併用によって確定する。 以上により、脊髄後角-外側結合腕傍核-視床下部オレキシンニューロンという連絡路の存在様式を明らかにする。そして、これまでの報告と合わせて、侵害刺激によるオレキシンニューロンの活性化によって覚醒反応が起こることを示唆したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は予定していたよりも実験数がやや少なく、消耗品の未使用額247,383円が生じた。これと平成25年度の研究費900,000円は消耗品と旅費に使用する予定である。 消耗品は、試薬および抗体に447,383円、実験動物に300,000円、ガラス器具に100,000円、および論文別刷に100,000円を予定している。旅費は国内の成果発表に、出雲-東京2回分として200,000円を予定している。
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