研究課題/領域番号 |
24500413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
市川 量一 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10223091)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シナプス / プルキンエ細胞 / 平行線維 / 登上線維 |
研究概要 |
今年度は、小脳登上線維をBDAで標識し、平行線維を抗Vglt1抗体で標識した電顕用ブロックをそれぞれP7, P9, P12, P15, P20, P30について作成した。そのブロックより、軟膜に対して水平断の連続超薄切片を、各齢につき3セット作成し透過電子顕微鏡により観察した。同様の方法で標識した切片についてさらにプルキンエ細胞を抗calbindin抗体により標識し、3種類を3色で染め分け共焦点レーザー顕微鏡で観察した。 まず、光学顕微鏡像から、プルキンエ細胞の樹状突起の高さの成長、平行線維シナプスの分布、登上線維シナプスの分布すなわち登上線維の伸展、を定量化した。連続電子顕微鏡観察から、平行線維シナプス、登上線維シナプスの分布領域の成長に伴う変化を調べ、その後それぞれのシナプスの樹状突起全長における数、樹状突起の長さあたりの密度を調べた。その結果、P7よりP15までは平行線維シナプスは樹状突起全体にシナプスを均一に形成し、成体でみられるような局在化は見られなかった。また、登上線維シナプスは登上線維が到達した樹状突起の領域に高密度にシナプスを形成していた。そのため、この時期はhypersynaptic periodといえる。しかし、P15からP20にかけ、平行線維シナプスは樹状突起近位部から消失し、登上線維シナプスもシナプス密度が減少した。結果として、シナプスの分節が形成された。そのため、P20以降をsegragated periodといえる。 以上のことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、プルキンエ細胞樹状突起のシナプス形成の機構について、連続電顕観察により解明する計画をたてた。今年度は各齢について連続電顕観察をおこなうことができ、それに基づき定量的解析をおこない、想定された結果をえることができた。そのため、順調に伸展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にあるように、プルキンエ細胞樹状突起のシナプスについて関連する分子の免疫染色をおこない、電顕観察を行うことを目的とする。 対象となる分子としては、グルタミン酸樹状突起delta2分子、AMPA型2型、をとりあげ、シナプスの種類を区分するために、Vglut1, Vglut2で標識する。前者は平行線維で特異的に、後者は登上線維で特異的に発現する分子である。 それらの結果をまとめることにより、シナプス形成における受容体分子の発現様式の変化を明らかにした。 また、光学顕微鏡像をより精細にするため、24年度に購入したプラーを用いて細胞内色素注入法にチャレンジする。それにより、電顕で明かになったデータを、光顕レベルにても適応し、より一般化する、ことを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に残高が生じたが、これは前倒し請求の理由であるダイアモンドナイフの再研磨の発注を予定したものの、購入予定の物品の年度内の納品は不可能である旨を通達されたため、それに相当する金額を次年度繰越とした。そのため、残高については、納品が可能となった時点で、ダイアモンドナイフの再研磨代として計上している。 平成25年度では、消耗品、具体的には、電顕観察および通常の実験で必要な薬品、実験器具、および二次抗体などに研究費を使用する予定である。また、一部は、関連する題材などの論文投稿費、成果公開のため学会発表にともなう旅費にも使用する予定である。
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