研究概要 |
今年度は、作成した、生後7日(P7), P9, P12, P15, P20, P30についての、小脳登上線維をBDAで、平行線維をVGLuT1で標識し、プルキンエ細胞を水平断した連続超薄切片を観察した。昨年度の結果を踏まえ、プルキンエ細胞樹状突起上のシナプス形成については、P9-P15がoverlapping phase P20-をsegregate phaseとした。前者では登上線維と平行線維が高密度で、しかも、同一レベルにてシナプスを形成する時期、後者が登上線維シナプスと平行線維シナプスが分節化して分布する時期である、と結論づけた。また、グルタミン酸受容体δ2型の分布を調べたところ、生後15日では将来的に平行線維シナプスが消失する近位部では持続する遠位部に比べグルタミン酸受容体δ2型の発現量が少なかった。 分節化に関与する分子機構として、登上線維の多重支配から一重支配に移行する際に関与するシグナル伝達系との関連性を考え、代謝性1型グルタミン酸受容体(mGluR1)、Protein kinase C γ型(PKCγ)からなるシグナル伝達系、とグルタミン酸受容体δ2型とCbl1, neurexin-βの系のそれぞれが候補として考えられた。前者の系の遺伝子欠失マウスについて解析をおこなったところ、分節化が起こっていなかった。また、後者の遺伝子欠失マウスでも、シナプスの分節化がおこっていた。以上より、シナプスの分節化にはmGluR1-PKCγのシグナル伝達系が必要であることを明らかにした。
|