研究課題
発生初期の神経系では、過剰でしかも重複する神経回路が多く見られる。しかし、生後早期の神経活動の亢進がシナプス回路の選択的強化と除去を引き起こし、それによってその冗長な神経回路は機能的な神経回路へと改築される。これまで、骨格筋を支配する脊髄運動神経や小脳プルキンエ細胞を支配する登上線維などで、入力線維が競合することにより多重支配から単一支配へ移行し、その結果として適正な神経回路が形成されることが明らかにされた。プルキンエ細胞には興奮性線維としてもう一種類、平行線維が入力する、しかし、そのシナプス回路がどのような発達変化を遂げるのかは不明であった。本研究により、以下の点が明らかになった。生後早期のマウスのプルキンエ細胞では樹状突起の全域に渡って平行線維シナプスが形成されるが、生後15-20日の間にて樹状突起の近位部から平行線維シナプスが除去されることで成体でみられるようなシナプス分布が完成する。具体的には、近位部に局在する登上線維シナプステリトリーと遠位部のに局在する平行線維シナプステリトリーとに、シナプス分布が分離することである。また、この平行線維シナプスの除去作用には、プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1-PKCgamma系が重要な役割を果たしていることが判明した。
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Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 113 ページ: 2282-2287
doi: 10.1073/pnas.1511513113. Epub 2016 Feb 8.