研究課題/領域番号 |
24500414
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
八木沼 洋行 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90230193)
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研究分担者 |
西山 慶治 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (10106354)
本間 俊作 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20261795)
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キーワード | 発生・分化 / 神経細胞死 / 転写因子 / 頚髄 / 運動神経 |
研究概要 |
平成25年度は、まず、発生早期に細胞死を起こす運動神経グループを特徴付けるHox遺伝子群と関連の遺伝子群を確定するため、細胞死が起こる領域の吻側端部において、それぞれの特異抗体と細胞死マーカ―を用いて詳細な解析を行った。 その結果、細胞死は第3頚髄(C3)以下で多数見られるが、C2レベルでは吻側に行くに連れて少なくなり、C1の下部付近で見られなくなることが確かめられた。同一切片上で、細胞死マーカーとHoxC5ないしHoxA5の発現を比べたところ、いずれも、細胞死の認められる部位よりもやや吻側から発現していることが明らかとなった。これは、これらのHox遺伝子は細胞死を起こす細胞群を直接規定するものではなく、バックグランドとなっていることを示唆する。 Hoxタンパクと協働して働く転写因子のFoxP1を調べたところ、発現する高さは細胞死の起こる高さとよく一致していた。FoxP1はすでに細胞死を起こす運動神経細胞の核内で必ず発現されていることを以前我々は明らかにしているので、FoxP1と細胞死との因果関係を明らかにするために、FoxP1を分解するマイクロRNA-9 (miR-9)を用いてFoxP1の発現抑制を試みた。miR-9を強制発現させるとFoxP1発現細胞数は著しく減少し、細胞死の数が有意に減少した。この時、細胞死を起こす運動神経であるLim3-の運動神経細胞はほとんど見られなくなっていたが、細胞死を起こさないLim3+の運動神経細胞の数には変化が見られなかった。この結果はFoxP1が、細胞死を起こす運動神経グループの出現において重要な役割を果たしていることを示している。今後、細胞死の前の時期でLim3-の運動神経細胞にどのような現象が起こっているか明らかにするとともに、miR-9は他の遺伝子の発現も阻害することが知られているため、FoxP1発現をより選択的に低下させるsiRNAなどを用いた実験を進める予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は当初計画したHoxC5やHoxA5の細胞死との関与について解析を進めたが、直接的な関係を示す結果には至らなかった。しかしながら、Hoxタンパクと協働して各分節に特異的な形質発現に関与することが知られているFoxP1に関する解析を進めたところ、FoxP1が細胞死を起こす細胞群の発現・発生に関与する可能性を示唆する実験的な結果が得られたため、当初の目的に近い成果が得られているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の結果は、FoxP1が、細胞死を起こす運動神経グループの出現において重要な役割を果たしていることを示している。今後、FoxP1のはたす役割について詳細に検討する予定としている。細胞死を起こす運動神経グループの消失が分化段階で起きているのか、あるいは一旦出現するもののもっと早い時期に細胞死を起こして消失してしまうのか、より早い時期について詳細な解析行う予定としている。また、miR-9はFoxP1以外にもonecutなど他の遺伝子の発現も抑制することが知られているので、今回見つかったFoxP1抑制の結果が、実際にFoxP1を抑制した結果であるのか区別する必要がある。そのため、siRNAなど特異性の高い手法で再検討を行うこととしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度中に発注した物品が入荷待ちとなり納品がおくれたため残金が生じた。 次年度使用額は25年度中に発注した物品の支払いのため26年度当初に使用する。26年度分の助成金は当初の予定通り使用する。
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