研究課題/領域番号 |
24500416
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小林 希実子 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (70418961)
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キーワード | マイクログリア / 脊髄後角 / 神経障害性疼痛 / P2Y受容体 / p38 MAPK |
研究概要 |
昨年度の結果を受け、神経障害性疼痛モデルの一つであるspared nerve injury(SNI)モデルを作製し、Rho kinase inhibitorを浸透圧ポンプを使用し髄腔内に持続投与したラットの脊髄後角での組織学的な解析を中心に行った。末梢神経損傷後の脊髄後角ではマイクログリアが増加し、細胞体が肥大し、突起が太く、短くなることが知られている。マイクログリアのマーカーであるIba1抗体を用いて免疫組織化学法を施し解析を行ったところ、vehicle群ではマイクログリアの増加、細胞体・突起の肥大がみられ、Rho kinase inhibitorを投与したラットでは、マイクログリアの増加が見られたが、突起は長く、太さは細く枝分かれが豊富で明らかな形態の違いが見られた。マイクログリアの突起の変化にはP2Y12受容体が関与していることが過去に報告されているため、次にP2Y12/13 agonist をnaiveラットに投与したところ、マイクログリアの形態変化が見られた。この変化にRho kinaseが関与するかを調べるためにP2Y12/13 agonistとRho kinase inhibitorを同時に投与したところ、このマイクログリアの形態変化が抑制された。これらのことから、マイクログリアの形態変化にはATP受容体-Rho kinase を介したシグナルが関与する事が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の推進方策をほぼ実行することができた。免疫電子顕微鏡法を使用した実験を実施することができなかったが、Rho kinase inhibitorの投与によるマイクログリアの形態変化を光学顕微鏡レベルで観察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)Rho kinaseの下流細胞内シグナルを検討。 Rho kinaseの下流カスケードで細胞骨格以外のシグナルを活性化している可能性にも着目する。末梢神経損傷後の脊髄後角の細胞群で活性化されるMAPK(ERK、p38、c-Jun 、 JNK)の中でもp38は、炎症や末梢神経損傷時に脊髄後角のマイクログリアでリン酸化を受け、サイトカインや栄養因子の転写活性を上昇させると考えられている。末梢神経損傷モデルラットにRho kinase inhibitorを投与したときのこれらMAPKのリン酸化の変化を免疫組織化学法にて解析する。 2)P2Y12/13 agonist 投与による疼痛行動へのRho kinase inhibitor投与による行動変化 P2Y12/13 agonistを投与すると疼痛行動の閾値の低下が見られるが、Rho kinase inhibitor投与により、その閾値が変化するかどうかを検討する。
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