研究課題/領域番号 |
24500419
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北尾 康子 金沢大学, 医学系, 准教授 (00019613)
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研究分担者 |
堀 修 金沢大学, 医学系, 教授 (60303947)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳虚血 |
研究概要 |
1.ATF6による虚血性神経細胞死制御: 野生型(WT)及びATF6ノックアウト(KO)マウスを用いて中大脳動脈閉塞(MCAO)を作成し、その後1日、3日、5日の段階でTTC染色により梗塞巣の大きさを比較した。その結果、MCAO後1日、3日の段階では両者に有意な差は認めないものの、5日の段階で後者における梗塞巣が前者に比し有意に増大していることが明らかになった。次にそのメカニズムを明らかにするため、各種抗体を用いた免疫染色及びウエスタンプロット、遺伝子特異的プライマーを用いたqRT-PCRを行った。その結果、ATF6 KOマウスでは脳梗塞後1-3日で起こるはずのグリア細胞(アストロサイト、ミクログリア)の活性化が抑制されていること、また、活性化したアストロサイトにより形成されるグリア瘢痕の形成も不十分であることが明らかになった。更にそれらの結果と関連して、脳梗塞後5日の段階では組織障害が梗塞巣中心部に限局されず、境界領域を超えて拡大していることが明らかになった。ATF6 KOマウスでグリアの活性化が抑制される理由として、活性化を誘導する液性因子の発現が同マウスで低下している可能性が示唆された。 2.ATF6過剰発現用のアデノウイルス:野生型ATF6、或いはドミナントネガティブATF6を過剰発現するアデノウイルス作成に成功し、ATF6 KOマウスより単離した培養アストロサイトにおける救済実験を開始した。 3.UPR活性化物質タンゲレチン(IN19)による虚血性神経細胞死制御。我々がUPR経路を活性化する化合物として同定したタンゲレチンをマウスに経口投与した後にMCAOを作成し、IN19による神経保護効果を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ATF6 KOマウスの解析が予想以上に進行した(現在、論文投稿準備中)。これまでの研究結果から、小胞体ストレス応答の主幹転写遺伝子ATF6を介したグリア細胞(特にアストロサイト)の活性化が、脳梗塞後に起こる神経細胞死(虚血性神経性防止)を抑制する上で極めて重要であることが明らかになった。今後、ATF6がグリア細胞の活性化を促すメカニズムをより分子レベルで解明することにより、脳梗塞発症後亜急性期における病態解明、新たな脳梗塞治療法確立が可能になると期待される。 2.ATF6過剰発現用のアデノウイルスの作製も順調に進行した。これまでに野生型ATF6、或いはドミナントネガティブATF6を過剰発現するアデノウイルス作成に成功し、ATF6 KOマウスより単離した培養アストロサイトにおける救済実験を開始している。 3.UPR活性化物質タンゲレチン(IN19)による虚血性神経細胞死制御の実験も順調に進行している。今年度中にその神経保護効果が明らかになると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
特に以下の点について重点的に研究を推進する。 1.ATF6によるアストロサイト活性化促進: これまでの我々の研究結果より、ATF6 KOマウスでグリアの活性化が抑制される理由として、活性化を誘導する液性因子の発現が同マウスで低下している可能性が示唆された。今後、ATF6がそれら液性因子の発現をどのように調節するかについて主に培養細胞系を用いて分子レベルで検討する。更に、既に作製しているATF6発現用アデノウイルスベクターを用いて救済実験も行う。 2.UPR活性化物質タンゲレチン(IN19)による虚血性神経細胞死制御: 既に実験を開始しているが、今後をさらに匹数を増やして検討する。現在、IN19(10mg/kg)を投与後1時間後にMCAOを行っているが、異なる投与量、投与時期についても検討を行う。 3.ATF4 KOマウスによる虚血性神経細胞死制御: ATF6と同様小胞体ストレス応答の主幹転写因子であるATF4のノックアウトマウスについてもMCAOを作成し、脳梗塞巣の大きさ、神経細胞死、グリア細胞の活性化について評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究を推進するため以下の研究費を請求する。 物品費として抗体、免疫染色用試薬、細胞培養関連器具等。旅費として国内学会参加。人件費として謝金分。
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