研究課題/領域番号 |
24500420
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
加藤 信介 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60194817)
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研究分担者 |
加藤 雅子 鳥取大学, 医学部, 助教 (80221183)
横山 淳史 鳥取大学, 医学部, 助教 (90529447)
瀧川 みき 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (80724369)
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キーワード | 神経変性疾患 / 筋萎縮性側索硬化症 / 経口治療薬 / キサンチン酸化還元酵素 / キサンチン酸化還元酵素阻害剤 / プリン非類似体 / アロプリノール |
研究概要 |
根本的な治療法のない神経難病の象徴である筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、ALS)に対する新規治療薬の開発を目的に、3種類の構造式の異なるプリン非類似体キサンチン酸化還元酵素(xanthine oxidoreductase, XOR)阻害剤であるTEI-6720・Y-700・FYX-051とプリン類似体XOR阻害剤であるアロプリノールの効果を、ALSモデルマウスを用いて、生存期間と6段階に評価した臨床症候学的定量解析に加えて、更に5種類の異なった運動負荷試験を実施した。即ち、伸展反射試験・傾斜面角度試験・フットプリント試験・ロタロッド試験・ビームバランス試験である。3種類のプリン非類似体XOR阻害剤であるTEI-6720・Y-700・FYX-051とアロプリノール及びプラセボの各投与群間で詳細に検討した。結果として、TEI-6720・Y-700・FYX-051の3剤は等しくアロプリノールとプラセボに比較して、5種類のすべての各運動負荷試験において有意な運動能力の改善が認められた。また、臨床症候と運動能力とを同時に反映する体重測定評価においても、TEI-6720・Y-700・FYX-051の3剤は等しくアロプリノールとプラセボに比較して、有意な体重減少抑制効果を確認できた。病理組織学的解析においては、TEI-6720・Y-700・FYX-051の3剤は、アロプリノールとプラセボに比較して、有意な脊髄運動神経細胞死抑制効果を証明できた。さらに、正常マウスのみならずALSマウスにおいてもこれらの3剤は容量依存性に特記すべき副作用を示さないことも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALS新規治療薬としてのプリン非類似体XOR阻害薬であるTEI-6720・Y-700・FYX-051の構造式の異なる3種類の化合物とプリン類似体XOR阻害薬であるアロプリノール及びプラセボの5種類の薬剤を使用して、体重測定解析を実施した。プリン非類似体XOR阻害薬であるTEI-6720・Y-700・FYX-051投与群では、プリン類似体XOR阻害薬であるアロプリノール及びプラセボ投与群と比較して有意な体重減少抑制効果が認められた。5種類の異なる運動負荷試験(伸展反射試験・傾斜面角度試験・フットプリント試験・ロタロッド試験・ビームバランス試験)では、プリン非類似体XOR阻害薬であるTEI-6720・Y-700・FYX-051投与群では、アロプリノール及びプラセボ投与群と比較して運動能力の有意な改善を認めた。 マウス脊髄の残存脊髄前角細胞の病理組織学的定量的解析結果の比較において、プリン非類似体XOR阻害薬であるTEI-6720・Y-700・FYX-051投与群は、アロプリノール及びプラセボ投与群に比較して、有意な脊髄前角細胞死抑制効果を認めた。 正常マウスのみならずALSマウスにおいて、これら治療薬の用量依存性の副作用の発現を検討したところ、症候学的及び病理組織学的にも副作用はみられないことが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
プリン非類似体XOR阻害薬であるTEI-6720・Y-700・FYX-051の構造式の異なる3種類の新規薬剤、プリン類似体XOR阻害薬であるアロプリノール及びプラセボの5種類の薬剤の投与群における脊髄組織を含む全身臓器の病理組織像の比較解析から、ALS臨床症候改善、運動機能改善、寿命延長効果におけるそれぞれの病態メカニズムの解明解析を行う。 凝集毒性(aggregation toxicity)仮説に基づき、終末期と病悩後期のALSマウスにおける変異SOD1凝集封入体に関する病理組織学的定量解析を行う。終末期と病悩後期における、実験5群間のALSマウスの脊髄前角細胞領域における変異SOD1凝集封入体数を、HE染色とSOD1免疫組織化学的染色を施行して、病理組織学的定量解析を実施することにより確定する。結果として、当該薬剤(TEI-6720・Y-700・FYX-051)において、アロプリノール及びプラセボと比較して変異SOD1凝集封入体数の有意な減少を証明する。即ち、変異SOD1毒性の有意な抑制効果を証明する。同時に、当該薬剤における運動神経細胞死抑制機序と変異SOD1凝集封入体形成抑制機序との病理学的解明方法として、アポトーシス関連酵素に関する免疫組織化学的染色を実施する。最も臨床応用に即した解析方法として、プリン非類似体XOR阻害剤であるTEI-6720・Y-700・FYX-051、アロプリノール及びプラセボをALSマウス発症後に投与することにより、プリン非類似体XOR阻害剤がALS発症後においても臨床症候学的・病理組織学的にALSを抑制することを確認する。即ち、プリン非類似体XOR阻害剤がALS新規治療薬たり得ることを証明する。
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