研究課題/領域番号 |
24500426
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
高森 康晴 関西医科大学, 医学部, 助教 (50309233)
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キーワード | 核膜 / 細胞分化 / ニューロン / グリア細胞 / 核ラミナ / ラミン / 細胞骨格 / 脳 |
研究概要 |
1.成獣フェレットの脳における2か所のニューロン新生領域の場所と形態、また各分化段階のニューロンの分布、形態、各種分化マーカーおよびラミンA/C、B1の存在について解析した。昨年度末に解析結果をまとめて雑誌に投稿したところ、追加実験の必要性が生じた。そこで今年度は、神経前駆細胞の免疫組織学的性質がニューロン新生領域である側脳室壁から嗅球まで保存されていることを重ねて確認した。論文はアクセプトされ一部は学会で発表した。 2.ラミンA/C遺伝子からは、C末のアミノ酸配列が異なるAとCの2種類のスプライシング・バリアントが生じる。従来はラミンAとCに共通な部位に対する抗体を用いた解析が主流であったが、近年ラミンAおよびCに特異的な抗体が市販され始め、申請者の研究室でも免疫組織化学的な解析に使用可能な抗体を購入して網膜における解析を行っている。今年度はこれらの抗体の成獣ラットの脳における最適固定条件の検討をおこなった。さらにラミンAとCの両方を認識する抗体との染色パターンの比較もおこなった。1%ホルムアルデヒドによる弱固定条件および4%ホルムアルデヒド固定をして熱処理で抗原賦活化した条件で染色が良好であることを確認した。 3.成体ラットの終脳皮質に存在する各種グリア細胞における、3種類のラミン・サブタイプ(A/C、B1、B2)の構成パターンについての解析を継続した。今年度は前述のとおりラミンAとCを区別し、計4種類のサブタイプの解析をおこなった。ラミンA/Cの存在パターンに関してIBA1陽性ミクログリアに2種類のタイプがあることを確認しつつある。 4.成獣ラットの脳における各種の神経系細胞におけるラミン結合タンパク質の存在パターンについての解析を昨年度に続いておこなった。3種類のタンパク質に加えてエメリンの抗体を購入して解析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.成体脳のグリア細胞におけるラミン・サブタイプの構成パターンの解析については、「当初の計画以上に進展している」。当初はラミンA/Cをひとまとめにしての解析を予定していたが、ラミンAとCを識別する抗体を導入することで、より詳細な解析ができている。 2.脳の神経系細胞におけるラミン結合タンパク質の解析については「当初の計画以上に進展している」。当初はラミン結合タンパク質の解析は予定していなかったが、興味深い結果が得られたことから新たに計画し、こちらの研究を優先して進めている。 3.発生過程の脳、およびNG2 陽性前駆細胞の培養系での解析については「遅れている」。フェレットにおける追加実験、また前述した解析を優先的に行っていることから、これらの研究は今後おこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.成体の脳に存在する各種グリア細胞における、3種類のラミン・サブタイプ(A、C、B1、B2)の構成パターンの解析を継続する。ラミンA/Cに関しては、ラミンAおよびCに特異的な抗体を併用して解析する。必要であればブロッティング法による生化学的な解析についてもおこなう。ラミンAとCの存在パターンについてはニューロンに関しても解析する。 2.脳における各種の神経系細胞におけるラミン結合タンパク質(LAP1、LAP2-beta、LBR、エメリンなど)の存在パターンの解析を継続する。おもに免疫組織学的解析をおこなうが、日地用であればブロッティング法などの生化学的な実験をおこなう。 3.発生期の脳に存在する神経系の幹細胞や前駆細胞における、3種類のラミン・サブタイプの発現パターンを解析する。免疫組織学的な解析を主流とするが、生化学的な解析もおこなう。動物としてはラット(胎仔および新生仔)を用いる 4.培養条件下でNG2陽性細胞からオリゴデンドロサイトへの分化を誘導し、分化過程における3種類のラミン・サブタイプの動態を免疫組織学的、また生化学的に解析する。次に、ラミン・サブタイプのタンパク質量やmRNA量の変動を生化学的手法で解析する。この解析結果をもとにラミン遺伝子の変異導入実験をスタートさせる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は細胞の培養系を用いた解析、また分子生物学的な解析の実施を予定していたが、新たな免疫組織学的な解析の必要性が生じた。そこで実験計画を変更したために研究費の使用額にずれが生じた。 物品費としては各種消耗品の購入を予定している。実験器具類としては、プラスチック器具、ガラス器具、ピンセットなどを購入する。実験用動物としては、主にラット、必要に応じてマウスやその他の哺乳動物を購入する。一般試薬としては、バッファー用試薬、アルコール類、各種薬品、洗剤などを購入する。免疫組織化学用試薬としては、一次抗体、二次抗体、また発色試薬などを購入する。細胞培養用試薬としては、クローン化培養細胞、培養液、血清などを購入する。生化学、分子生物学用試薬としては、ブロッティング用試薬、RNA精製試薬、制限酵素、ベクターやバクテリア類などを購入する。 国内旅費としては、日本神経科学大会、日本解剖学会、日本組織細胞化学会などの国内での学会発表を予定している。研究成果を投稿論文として発表する予定であり、人件費謝金としては論文投稿料、またその他として外国語論文の校閲料などを予定している。
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