研究概要 |
「背景と目的」エンドセリン B 受容体(ETBR)は血管収縮物質エンドセリンの受容体であり、様々な癌において免疫回避機構との相関が報告されている。本研究の目的は中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)におけるETBRの発現とその免疫回避機構との相関について明らかにすることである。本年度は昨年度に得られた神経膠腫についてのETBRの発現データに基いてPCNSLにおけるETBRの役割について検討した。 「対象と方法」PCNSL症例 26例を対象にした。腫瘍細胞, 血管内皮細胞でのケモカイン およびそれぞれの受容体(CXCL12, CXCL13, CXCR4, CXCR5)、腫瘍新生血管のマーカーであるCD105 (endoglin)、腫瘍浸潤 T cell-subset (TIA-1, FOXP3) の発現を検討した。 CXCL12, CXCL13の評価は腫瘍細胞の標識率により3段階で評価した (1+:0-5%, 2+:5-50%, 3+>50%)。 さらにETBR発現血管とのケモカイン、T cell-subset との相関を解析した。 「結果」CXCL12陽性は26例中26例 (1+:3 , 2+: 23)であった. CXCL12陽性例は全例で血管内皮細胞においてもCXCL12陽性所見を示した。CXCL13陽性は26例中23例 (1+: 19, 2+:4)であった. CXCL13陽性例中2例のみが血管内皮細胞に陽性を示した. CD105で血管が標識された症例は26例中11例であった。 TIA-1標識数は統計学的にFOXP3標識数よりも有意に高かった。またETBRは全例でケモカイン(とくにCXCL13陽性細胞周囲)およびCD105で標識される新生血管で発現していた。 「結論」ETBRはケモカインと共にPCNSLの微小環境を調整して腫瘍の増殖、免疫回避に関与している。
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