研究実績の概要 |
エンドセリンB受容体 (EBR)は癌の免疫回避機能としての役割が注目されている. 今回, 中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)における免疫回避機構を明らかにするためにEBRおよびケモカイン発現と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の関係について検討した.【対象および方法】PCNSL24例を対象にした. 免疫染色で腫瘍細胞,血管内皮細胞でのEBRとCK, CXCL12, CXCL13およびその受容体, 腫瘍浸潤T cell-subset (TIA-1, FOXP3)について検討した. EBR, CXCL12, CXCL13の評価は血管および腫瘍細胞の標識率により3段階で評価した.【結果】EBRは24例中12例で陽性(1+:4, 2+:5, 3+:3)であった. CXCL12陽性は24例中22例(1+:5, 2+:14, 3+:3)であり, 血管内皮細胞は全例で陽性所見を示した. CXCL13陽性は24例中19例(1+:10, 2+:6, 3+:3)であった. CXCL13陽性細胞は新生血管周囲に集簇しており, またその周囲にTILが増加する傾向がみられた. EBR陽性例ではTIA-1, FOXP3陽性のTIL数の平均値はそれぞれ13.58+/-14.2, 2.17+/-3.07であり, 陰性例では38.30 +/-39.61, 9.93+/-16.97であった. TIA-1陽性TILについてはEBR陽性例は陰性例よりも有意に少なかった(P<0.05), FOXP3陽性TILでも同様の結果が得られた(P<0.05).【結論】1. PCNSLはEBRを介してTIA-1で標識されるcytotoxic T cellを調整することにより宿主側の免疫を回避する. 2. PCNSLはCXCL13を発現してTILを調整している可能性が考えられる.
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