研究実績の概要 |
我々はこれまで,TDP-43, FUS cDNAや蛋白分解系を阻害するshRNAを発現する組換えアデノウイルスをラット,マウス末梢神経に混合接種し,ウイルスの軸索内逆行輸送により運動ニューロンに細胞質内凝集体を形成しうることを報告した.さらに,より長期間安定した遺伝子導入発現が可能な組換えアデノ随伴ウイルス9型(AAV9)を用いて運動ニューロン細胞体に同様の凝集体形成を認めた.そこで,ヒト正常TDP-43をEGFPとともに発現する組換えAAV9を1日齢ICRマウスの側脳室に注入接種し,脳脊髄における外来性TDP-43の長期発現を検討したところ,接種2,4週~6ヶ月後にわたって大脳,脳幹,脊髄に瀰漫性にEGFP陽性ニューロンを認めた.今後,このマウスにヒトTDP-43および蛋白分解系阻害shRNA組換えアデノウイルスを追感染させて局所の運動ニューロンにヒトTDP-43凝集体を形成させ,凝集体が周囲の細胞にヒトTDP-43を介して伝播していくか否かを経時的に観察する予定である. 一方,培養ラット神経幹細胞由来ニューロン,アストロサイト,オリゴデンドロサイトに,ヒト正常またはC末断片TDP-43をDsRedとともに発現する組換えアデノウイルスを共感染させ,プロテアソーム阻害剤MG-132を負荷すると,タイムラプス蛍光撮影で12時間後よりDsRed陽性TDP-43凝集体が細胞質に徐々に充満し,やがて細胞膜の破綻とともに細胞死に至り,残存した不溶性の凝集体が長時間浮遊する像が観察された.この凝集体はsarkosyl不溶性の顆粒状構造物からなり,リン酸化TDP-43を含んでいた.また細胞外に放出された凝集体が隣接する細胞に取り込まれる像も観察された.現在,凝集体の細胞間伝播の可視化に関しても検討を行っている.
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