研究課題/領域番号 |
24500430
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
新井 信隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 参事研究員 (10167984)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | てんかん / 鉄 / アストロサイト / foamy spheroid body / 脳外科治療 |
研究概要 |
申請者がこれまで診断してきた、てんかん外科手術によって焦点切除された脳検体約800例、てんかんを含む様々な神経疾患の剖検脳約2,000例のパラフィンブロックを用い、人脳における鉄沈着病変の疾病構造と、そこに生じている細胞病理学的変化を明らかにすることが第一ステップである。24年度は、このうち切除焦点対象が頭部外傷後遺症、海綿状血管腫であった症例につき(18例)、病変部および周辺部における鉄沈着様式、アストロサイト・マクロファージの反応様式について検証した。主な観察対象の病理像は、foamy spheroid body、GFAP-reactive astrocyte、iron-laden astrocyte、gliosis、iron-laden macrophage、hemosiderin depositsであり、これらを、HE染色、KB染色、Bodian染色、Holzer染色、Berlin blue染色により、また、免疫組織化学としては、GFAP染色、aquaporin4染色などにより、出現の程度、強弱、広がりなどを検証した。特にfoamy spheroid bodyは、申請者が発見した鉄暴露反応性のアストロサイト異常物であり、研究対象としてフォーカスが当てられたことは最初のことであると思われる。 主たる病変では、比較的粗大なhemosiderin depositが多く認められ、その周囲には極めて多数のfoamy spheroid bodyの集積を認めた。また、foamy spheroid bodyの内部には微細な鉄顆粒が含まれ、周囲や内部にはメッシュ様のグリア線維の集積があり、鉄暴露により誘導された特殊なアストロサイト異常であることを確認することができた。また、これらに加えて脳形成異常病変の鉄沈着様式についても予備的観察を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検証対象の検体収集については、共同研究者の協力が得られており、支障がなく進められている。染色についても、順調に行われており、これまでのところの進展は計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
上記の計画により得られた鉄沈着組織におけるアストロサイトの異常異常、神経細胞の過剰興奮性の存在について、グリア系および神経細胞系の多様な分子指標を可視化することにより、てんかん原性への関与を検証する。具体的には、アストロサイトと神経細胞の間にある鉄リサイクルに関与する分子の表出の異常を、鉄暴露てんかん焦点部の切片を用いて免疫組織化学的に検証してゆく。また、頭部外傷、海面状血管腫以外の器質的なてんかん原性病変についても、24年度に行った検証を進めてゆき、てんかん脳全体についての検証として対象を広げてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
鉄代謝に密接に関わるグリア細胞が表出する神経毒活性物質であるグルタミン酸のトランスポータなどを免疫組織学的に観察するための抗体、試薬、ガラス標本関係の購入費にほとんどすべてを当てる予定である。
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