研究課題/領域番号 |
24500430
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
新井 信隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 副所長 (10167984)
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キーワード | てんかん / 鉄 / アストロサイト / foamy spheroid body / 脳外科治療 |
研究概要 |
代表者がこれまで実施してきたてんかん外科病理診断を含むヒト神経疾患の病理学的診断により、新しく認知されたてんかん原性焦点と思われる鉄沈着病変が存在することを明らかにしてきた。また、そのような病変部にはアストロサイトの特殊な形態異常が存在すること、また、形態異常はないものの微細鉄顆粒が細胞質内に沈着したアストロサイトが多く出現していること、そして、それらが何らかの機能異常を起こしている可能性を指摘してきた(グルタミントランスポーターの免疫組織学的な表出異常)。このような病変を生じる基礎疾患として、代表的な海綿状血管腫の他、頭部外傷(挫傷)に起因する鉄沈着が海馬に波及する現象もヒトで観察し得た。これらの知見につて、診断病理の現場に普及させるため脳神経病理デジタルデータベースを用いて公表・普及させる取り組みも同時に行ってきた。これらのことにより、てんかん脳外科治療の現場における治療戦略(切除範囲の吟味)の改良に役立つと思われる。 鉄暴露によって一番顕著な変化を惹起される細胞はアストロサイトであり、極めて特殊な泡状変化を呈する(foamy spheroid body)。このfoamy spheroid bodyは代表者が命名した病理構造物であり、神経細胞や神経突起の破壊や加齢的負荷などに誘発される特殊な形態異常である。そして、このfoamy spheroid bodyが極めて緩徐な鉄暴露によって惹起されていることをこれまで明らかにしてきた。本研究では、このような特異なアストロサイトの変化とてんかん原性との関係性について明らかにする。 また、てんかんを惹起することがある疾患として脳腫瘍、その他の変性疾患についても同様な検証を行ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検証対象の検体収集については、これまでの共同研究者の協力が得られており、支障なく進めることが出来ている。染色などの作業についても順調に行われており、これまでのところの進捗はほぼ計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
鉄沈着脳組織における細胞異常(アストロサイトの形態・機能異常、および、神経細胞の形態・機能異常)を示唆するような、グリア系および神経細胞系の多様な細胞マーカー分子について可視化することにより、てんかん原性との因果関係を検証する。特に、てんかん焦点切除検体による検証実験を増やしてゆくことにより、電気生理学的によりてんかん原性が強い病変と、そうではない病変での所見の違いを見いだす。それにより、細胞レベルでのどのような変化が、てんかん原性に密接に関わっているのかを明らかにすることができる。そのために、頭部外傷、海綿状血管腫だけでなく観察対象を広げてゆく予定にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初本研究費で予定していた学会出張が、招待講演の依頼を受けたため、出張に関する経費の支出が発生しなかったため。また、抗体の使用量に関して、染色対象エリアが当初の計画より狭くても目的が達せられたため、抗体購入費が少なくて済んだことも理由の一つである。 最終年度は、当初の予定通りに執行する計画に変更は生じていない。
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