研究課題/領域番号 |
24500435
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 幸市 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00302498)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | G蛋白共役型受容体 / 脳虚血 / ミクログリア / 脳内炎症 / 細胞死 / 炎症性サイトカイン / 酸性pH / プロトン感知性受容体 |
研究実績の概要 |
中枢神経系のpH変化は神経機能に重篤な影響を及ぼすと考えられるが、そのメカニズムは依然不明である。本研究では、中枢での酸性ストレスに対するプロトン感知性(pH 7.6~6.0)のG蛋白共役型受容体の役割を探索する。また、プロトン感知性受容体が脳虚血や梗塞と関連したミクログリアの活性化に関与しているのか、神経の細胞死や神経機能にどのような影響を与えるのか明らかにするため、プロトン感知性受容体欠損マウスから調整した細胞を用いて検討している。神経細胞の生体膜上で微妙なpHの調節が行われることが示唆されており、細胞外pH低下による神経細胞の機能制御機構が予想された。そこで、平成26年度では、プロトン感知性受容体が脳虚血や梗塞と関連した神経細胞の制御に関与しているのか調べるため、神経細胞に及ぼす細胞外pH低下による直接的な影響とその細胞内シグナル機構の解析を試みた。 マウス胎仔の大脳皮質から調製した神経細胞にはプロトン感知性受容体(OGR1、GPR4)が発現していた。発現プロファイルが似ている神経腫細胞株を用いた解析から、細胞外pH低下による神経細胞の機能発現として細胞内Ca2+動員や神経型一酸化窒素合成酵素の活性化が観察された。受容体分子のsiRNAを用いた結果、これら応答にプロトン感知性受容体の関与が示唆された。このようなプロトン感知性受容体を介する作用が神経細胞の機能調節に関わっていると推測された。一方、マウス胎仔の神経細胞を用いて細胞内Ca2+動員や細胞安定性に対する細胞外pH低下による影響を調べた。今後、この応答の一部にプロトン感知性受容体が関与しているか解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24、25年度では、酸性ストレスに対するプロトン感知性受容体の役割を個体レベルでの解析を中心に探索してきた。前脳虚血手術を施した後、RT-qPCRで前脳組織におけるミクログリアの活性化を解析したところ、炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1β)の発現が野生型マウスに比べTDAG8(プロトン感知性受容体)欠損マウスにおける発現が高い傾向であった。また、平成25年度では、LPS存在下でミクログリアを弱酸性処理するとTDAG8を介した細胞外へのIL-1β産生抑制が観察された。このように、中枢神経系ではTDAG8を介した抗炎症性の保護作用が機能しているかもしれない。平成26年度では、マウス胎仔の神経細胞や神経腫細胞においてプロトン感知性受容体(OGR1、GPR4)が発現していること、神経腫細胞においてプロトン感知性受容体を介する作用が神経細胞の機能調節に関わっていることが推測された。一方、マウス胎仔の神経細胞においてグルタミン酸をコントロールとして細胞内Ca2+動員やAkt活性化に対する細胞外pH低下による細胞応答を解析した。しかし、酸性ストレスがプロトン感知性受容体を介するかまで至らなかった。今後、このような未解決の項目に関して継続して行う。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞の生体膜上で微妙なpHの調節が行われることが示唆されており、細胞外pH低下による神経細胞の機能制御機構が予想された。実際、神経細胞の機能発現として細胞内Ca2+動員や神経型一酸化窒素合成酵素の活性化が観察されるが、これら応答にプロトン感知性受容体が関わるか神経腫細胞株を用いて解析してきた。そこで、プロトン感知性受容体が、神経細胞の機能制御に関与しているのか、これら分子の欠損マウスから調整した神経細胞を用いて、前年度未解決の項目として、神経細胞に及ぼす酸性ストレスの直接的な影響とその細胞内シグナル機構を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの研究課題にて、プロトン感知性受容体がミクログリアの活性化に関与しているのか、神経の細胞死や神経機能にどのような影響を与えるのか明らかにするため、プロトン感知性受容体欠損マウスから調整した細胞を用いて検討してきた。計画は概ね順調に進行したが、マウスの作出が予定より遅れたため低pHによる神経系細胞の機能調節シグナルの解析のための未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
プロトン感知性受容体が、脳虚血や梗塞と関連した神経細胞の制御に関与しているのか、これら分子の欠損マウスから調整した神経細胞を用いて、神経細胞に及ぼす酸性ストレスの直接的な影響とその細胞内シグナル機構を解析する(前年度未解決の項目を含む)。これにより、神経系細胞のプロトン感知性受容体を介した低pH作用が明らかになると予想される。成果発表のための経費以外はマウスの維持(えさ代、ケージ使用料)と消耗品費に当てたい。
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