研究課題/領域番号 |
24500437
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長尾 元史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (00359671)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アストロサイト |
研究概要 |
アストロサイトは神経伝達物質の取り込み、シナプス形成、血液脳関門の制御など、脳機能において重要な役割を果たす。哺乳類の中枢神経系の発生過程において、アストロサイトはニューロン産生後の発生後期に神経系前駆細胞から生み出される。近年の研究により、アストロサイトの発生は成長因子やサイトカインなどの外因性因子とエピジェネテック修飾などの細胞内在性プログラムの両方により制御されることが示唆されているが、アストロサイト分化の分子メカニズムについては未だ不明な点も多い。本研究では、脳の発生過程において、クロマチン制御因子であるHMGN (High mobility group nucleosome-binding)ファミリータンパク質が、アストロサイト分化を促進することを報告する。胎生期のマウス前脳由来の神経系前駆細胞で、HMGN1、2、3を過剰発現させたところ、HMGN1、2、3はアストロサイト分化を促進し、ニューロン分化を抑制した。逆に、神経系前駆細胞でHMGN1、2、3をノックダウンすると、アストロサイト分化の抑制とニューロン分化の促進が観察された。HMGNファミリータンパク質はN末端にあるセリン残基のリン酸化でその細胞内局在が制御されていることが知られている。リン酸化されたHMGNファミリータンパク質は、ヌクレオソームと結合できず、核外に移行する。In vitro培養系において、ニューロンとアストロサイトでリン酸化HMGN1の発現を調べたところ、ニューロンの細胞質においてその発現が高いことを見出した。現在、その意義とリン酸化を介する制御機構について検討中である。以上より、HMGNは、アストロサイト分化促進において重要な役割を果たすクロマチン制御因子であることが示唆された。この成果により、アストロサイトの分化制御メカニズムの理解がさらに進んだと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アストロサイトの分化を制御する分子メカニズムは不明な点が多いが、本年度の研究で、クロマチン制御因子であるHMGNファミリータンパク質が、新規のアストロサイト分化促進因子であることを見出すことができた。実験は、おおむね計画通り進行しており、ここまでの内容で、現在、論文投稿のための準備をはじめている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で、HMGNファミリータンパク質がアストロサイト分化を促進することは明らかとなったが、どのように分化促進するのか詳細な分子メカニズムは未だ明らかではない。今後、その点を中心に解析を進め、さらに理解を深める予定である。また、HMGNファミリータンパク質の中の一つであるHMGN1がリン酸化され、ニューロンの細胞質においてリン酸化HMGN1の発現が高いことを見出した。今後、その意義とリン酸化を介する制御機構についても検討する予定である。さらに、HMGNファミリータンパク質以外にもアストロサイト分化を制御する新規分子を見出しており、その分子についての解析を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、神経系前駆細胞の初代培養系を用いたin vitroの実験、及びin uteroエレクトロポレーション法を用いて目的遺伝子を導入したマウスを用いたin vivoでの実験を行う。そのため、定期的に妊娠マウスを購入する必要があり、その費用にあてる予定である。
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