脳の高次機能は、神経細胞が形成するネットワークの活動に基づくと言われている。抑制性神経細胞の一つであるパルブアルブミン陽性(PV)細胞は、海馬の全細胞中わずか5 % ほどの細胞数しかないが、多数の軸索を周囲の神経細胞へ投射し、神経細胞の同期活動や可塑性を制御している。しかしながら、神経活動依存的にPV の神経活動を制御するメカニズムは明らかとなっていない。我々は、興奮性神経細胞の活動依存的に活性化するニューロプシン-Neuregulin-1 シグナルが、このErbB4 シグナルを介したPV 制御機構に重要な役割を果たすことを明らかとし、またこのシグナルが統合失調症患者で異常が観察されるガンマ波の形成に関与していることを示した。このように本研究は、興奮性細胞から抑制性細胞へと伝達される特異的シグナル経路を明確にし、ニューロプシン-Neuregulin-1 がてんかんや統合失調症の治療標的の候補となることを示唆している。
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