小胞体において構造異常を起こしたタンパク質、いわゆるミスフォールディッドタンパク質が過剰に蓄積した状態を、小胞体ストレスとよぶ。この小胞体ストレスからの防御機構として、小胞体ストレス応答と呼ばれる応答機構が細胞には存在する。 小胞体ストレスセンサーPERKのノックアウトマウスは、膵臓β細胞で細胞死が見られること、骨芽細胞において骨基質であるコラーゲンI型の分泌が低下していることが報告されていたが、神経細胞に関する報告はなかった。一方、ヒトPERK遺伝子は、Wolcott-Rall ison syndrome (WRS)の原因遺伝子であることが報告されており、骨端形成異常、成長遅延、肝臓・腎臓不全、精神遅滞を呈する。PERKノックアウトマウスの神経細胞を詳細に検討したところ、脳の委縮、特に嗅球において顕著に委縮していることが明らかとなった。また、大脳皮質の6層構造構築に重要な役割を担うサブプレートニューロンにおいて、小胞体ストレスが亢進していることが明らかとなった。これらの結果から、小胞体ストレス応答は、脳の発生に関与していることが明らかとなった。
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