研究課題/領域番号 |
24500442
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
柳田 俊彦 宮崎大学, 医学部, 教授 (60295227)
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研究分担者 |
村上 学 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80302090)
根本 隆行 宮崎大学, 医学部, 助教 (90506833)
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キーワード | インスリン抵抗性 / インスリンシグナリング / 発現調節 / 神経変性疾患 / 海馬神経細胞 / ネガティブ フィードバッ ク / 脳・神経 / βアミロイド |
研究概要 |
神経のインスリン受容体シグナルが、神経新生や神経機能の維持・修復、学習・記憶に重要な役割を果たすこと、アルツハイマー病な どの神経変性疾患において脳におけるインスリン抵抗性が起こっていることが明らかになってきた。本研究では、臨床で用いられてい る様々な薬物や生理活性物質、食事中に含まれている成分などが、神経系のインスリン受容体シグナルに及ぼす影響について解析を行い、1-2の研究成果を得た。さらに、神経におけるインスリンの生合成、分泌のメカニズムについて、3の研究成果を得た。 1. 神経保護作用が報告されている薬物や生理活性物質(ニコチン、エストラジオール、クルクミン、ドコサヘキサエン酸、レスヴェ ラトロール など)は、インスリン受容体の下流のシグナル分子である IRS-1/IRS-2の発現増加を介してインスリン受容体シグナルを 増強させた。 2. アルコールは、インスリンのインスリン受容体への結合を阻害することにより、インスリンシグナルを減弱させた。 3.培養海馬ニューロンにおけるインスリンの生合成とAβ1-42 の及ぼす影響をpH感受性蛋白 pHluorin(pH 7.4:細胞外で GFP 発光、pH 5.0:分泌小胞内で消光)付加インスリンの発現系を用いて分泌動向を可視化検討した結果、(1)海馬ニューロンで合成されるインスリンは、分泌小胞に取り込まれ、脱分極後の細胞内カルシウム濃度上昇に伴って細胞外に分泌されること、(2)プロインスリンの発現が、Aβ1-42によるGSK-3βの活性変動を介して変動することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの神経系におけるインスリン受容体シグナルの変動解析に加えて、新たに海馬神経細胞におけるインスリンの生合成/分泌のメカニズムを明らかにし、アルツハイマー病における誘発因子と考えられているβアミロイドの影響についても明らかにした。これらの成果は、今後、脳内のインスリン抵抗性の解明に大きく寄与しうる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に従って、今後もインスリン抵抗性の誘発因子、改善因子の候補物質について解析を行う。 さらに、脳内におけるインスリンの生合成・分泌のメカニズムについても、さらに解析を行う。 個々の研究データは蓄積しており、今後も研究の展開が期待しうる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者が所属変更(宮崎大学医学部看護学科臨床薬理学に教授として赴任)となり、新たな研究室の立ち上げの必要性が生じたが、大学内の研究棟の改修工事と重なり移転ができなかったため、次年度の移転に備え、予算使用を減額した。実験の遂行に必要な消耗品は、前年度に購入しており、研究の遂行には支障をきたしていない。 新たな実験室の立ち上げに伴い、いくつかの備品購入を必要とするが、基本的な使途項目に変更はない。 主な使途としては、実験に必要な消耗品、実験器具、成果発表のための旅費、論文投稿費などである。
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