研究課題/領域番号 |
24500443
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中村 史雄 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10262023)
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研究分担者 |
有田 恭平 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (40549648)
山下 直也 横浜市立大学, 医学部, 助教 (40508793)
橋本 博 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40336590)
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キーワード | セマフォリン / Sema3A / CRMP1 / フィラミン / Filamin-A / 線虫 |
研究概要 |
これまでの結果を論文としてまとめ、2013年10月にNature Communicationsに投稿した。現在、論文の追加実験を行っており、その過程で得られた結果を中心に記す。 1.線虫のセマフォリン情報伝達へのFilamin-1の関与:線虫のSema2a(mab-20)とその受容体Plexin-2が運動神経DD/VDの投射制御に関与することを見いだした。またDD/VD投射制御においてPlexin-2とFilamin-1が遺伝的に相互作用することを明らかにした。 2.Filamin-A全長とCRMP1の相互作用:CRMP1はFilamin-Aに結合する。またCdk5のリン酸化摸倣体であるCRMP1(S522D)はより高い親和性でFilamin-Aに結合する。非リン酸化摸倣体であるCRMP1(S522A)はCRMP1野生型と同程度の親和性を示した。このことからSer522のリン酸化によりCRMP1とFilamin-Aの相互作用が増強すると考えられた。 3.F-actinとFilamin―A相互作用に及ぼすCRMP1の影響:精製したF-actinとFilamin-Aを混合するとゲル化する。ここにCRMP1(S522D)を加えると濃度依存性にゲル強度が低下した。一方、この変化はCRMP1野生型では見られなかった。 次に培養細胞系におけるF-actinとFilamin-Aの相互作用を検証した。CRMP1野生型の発現はF-actinとFilamin-Aの相互作用を増強した。一方、リン酸化摸倣体S522Dではこの相互作用が低下した。さらにSema3A受容体Neuropilin-1、Plexin-A1、CRMP1野生型を発現させた細胞では、Sema3A刺激に伴い、Filamin-AとF-actinの相互作用が低下した。ところがFilamin-A・CRMP1相互作用が低下した変異体、CRMP1(N247A)やFilamin-A(R96A)ではこの変化が見られなかった。これらの結果からSema3A刺激に伴い、CRMP1はFilamin-AをF-actin骨格から解離させ、アクチン骨格を脆弱化すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では1)Filamin-A全長とCRMP1複合体の電子顕微鏡像による相互作用検討、2)複合体結晶構造の決定とその情報に基づく相互作用部位の検証を提示している。 このうち1)は原子間力顕微鏡を用いてCRMP1-Filamin-Aの複合体構造を検討した。Filamin-A単独は全長190nmのV字紐状、CRMP1(S522D)は直径30nm程度の粒子を示すのに対して、Filamin-A・CRMP1(S522D)複合体は直径90nmの新たな粒子が観察された。これはFilamin-Aの新たな形態制御機構であると考えられた。 2)の複合体結晶は得られていない。しかしFilamin-A分子内のCRMP1相互作用に関与するアミノ酸残基はN末端及びC末端ともに決定した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたるため、現在Revise中の論文を早急に完成させる。 研究代表者は、CRMP1, Filamin-A分子内の相互作用に関与するアミノ酸を決定していることから、これらのアミノ酸を腹部部分ペプチドを用いた、Sema3Aの情報伝達阻害実験を行う。さらにSema3A情報伝達に関与する他の分子(Src, Fyn, PTPδ等)とCRMP1-FilaminA情報伝達系の関連を検討する。 研究分担者はCRMP1, Filamin-Aの部分領域を用いて複合体の結晶作成や構造解析を引き続き行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
投稿中論文の追加実験に必要な試薬、抗体等の消耗品を購入するために20万円ほど繰り越した。 論文Reviseに必要な一次抗体(anti-PlexinA1, anti-HA, anti-Filamin-Aの3種類、1本約5万円)と実験消耗品(5万円程度)の購入に用いる。
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