研究課題
昨年度の研究から、PlexA4が種々の相互作用分子と複合体を形成し、樹状突起に局在するには、まず、細胞体で相互作用してから樹状突起へ輸送されることをが示唆された。しかし、この仮説を具体的に証明できていなかったため、本年度は、PlexA4とGluA2の相互作用をモデルとしての証明に取り組んだ。これまでにin situ PLA法により、培養海馬ニューロンにSema3Aを添加すると、PlexA4とGluA2の相互作用シグナルが、まず細胞体で増強し、その後樹状突起でも上昇することを見出していたが、このSema3Aによる変化は、PlexA4側の相互作用ドメインであるPlexA-IPTドメインの強制発現により完全に消失した。一方、GluA2が樹状突起に輸送されるときに微小管との相互作用を仲介するGRIP1をノックダウンしたときは、細胞体での上昇には変化がなかったが、樹状突起での変化は著しく阻害された。これらのことから、PlexA4とGluA2は細胞体で相互作用後に、GRIP1を介して微小管と相互作用することにより樹状突起に移行することが明らかになった。Sema3Aによる樹状突起成熟作用についても更なる解析を行った。まず昨年度見出したGluA2のノックダウン効果を検証するため、ノックダウン耐性のGluA2変異体を作成しレスキュー実験を行ったところ、GluA2ノックダウンによるSema3Aの作用の減弱がレスキューされることを見出した。さらに、Sema3Aシグナル自体を抑制せず、GluA2を含む輸送複合体の形成を選択的に阻害する可溶性PlexA-IPTを添加してもSema3Aによる効果の減弱が認められた。これらから、Sema3Aにより樹状突起への輸送が促進されるPlexA4、GluA2を含む輸送複合体の生理的な役割は、樹状突起の成熟を促進することであることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
過去二年の実験から、培養海馬ニューロンを用いたin vitroの実験において、Sema3Aによって惹起されるPlexA4輸送複合体の樹状突起までの輸送機構、ならびに、生理的意義が明らかになった。このことは当初計画していた構想とほぼ合致しているため、概ね順調に進展していると評価できると考えられる。さらに、in vivo解析を行うため、子宮内電気穿孔法を用いた実験条件の設定に取り組んだところ、生後15日目における海馬神経細胞の樹状突起の形態解析が行える条件を見出すことに成功したことも、計画が順調に進展していると評価できる点である。
当初計画に沿って進み、in vitorでの解析に関してはほぼ終えたと評価できる状態に到達した。そこで最終年度である平成26年度は、これまで見出してきた実験結果のin vivoレベルでの意義を検討するため、主に子宮内電気穿孔法を用いた実験に取り組む。表現型の評価には、すでに申請者を含む研究グループが見出しているsema3A遺伝子欠損マウスの表現型を参考に、PlexA4、GluA2を含む輸送複合体の形成を阻害したときに、sema3A遺伝子欠損マウスと類似した表現型が認められるかを検討する予定である。
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