研究課題
1.NOX1によるHPA axisの制御機構の解明研究代表者はストレスによる不安様行動の増大とCRH mRNA発現増加に視床下部のNOX1が寄与することを見出した。そこで本年度はNOX1によるHPA axisの制御機構の解明を行った。NOX1によるCRH mRNA発現の制御機構解明のため、マウス視床下部切片培養系を用いた。培養切片にforskolinまたは高KCl処置を行うと野生型マウス(WT)切片でCRH mRNA発現が有意に増加したが、NOX1欠損マウス(KO)切片では認められなかった。次にROSにより活性が調節される分子で、CRHニューロンの活動を制御するKCC2とCRHの転写因子CREBに注目した。KCC2を過剰発現させたHEK293細胞に過酸化水素を処置したところ、KCC2活性の増加が認められた。この結果は仮説とは異なることから、KCC2はNOX1によるCRHニューロン活動制御に寄与する分子ではないと考えられる。またNOX1を過剰発現させた細胞においてforskolin刺激によるCREBリン酸化の増強は見られなかった。2.NOX1によるうつ様行動制御機構の解明コルチコステロン(CORT)の慢性投与により、WTにおいてBDNF発現が減少したが、KOでは認められなかった。一方、CORT投与によるGDNFの発現変動は見られなかった。BDNF発現制御機構の一つとしてエピゲノム解析を行った。その結果、一部のBDNFプロモーター領域でCORT投与によりDNAメチル化の亢進がWTで生じていたが、KOではその亢進は抑制されることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
24年度は「NOX1によるHPA axisの制御機構の解明」を掲げて研究を行った。In vivoで見られたNOX1によるCRH発現増加がin vitro で確認することができた。しかし、NOX1由来ROSにより調節される分子の同定は至らなかった。しかし、当初25年度で計画していた「NOX1によるうつ様行動制御機構の解明」を並行して行っており、CORT投与によるBDNF発現減少にNOX1が関与し、その機序の一つとしてエピゲノム制御が関与する知見を見出し、この研究課題解決の糸口を見出すことができた。総合すると24年度はおおむね順調に進展していると考えられる。
「NOX1によるHPA axisの制御機構の解明」視床下部培養切片を用いて解析を行ってきた。これを使用する利点としてはNOX1-KOマウスから作製することが可能であること、成熟CRHニューロンを維持できることなど有用な点が挙げられる。しかし、層構造を維持していることから顕微鏡解析が困難であること、CRHニューロンの割合が非常に小さいため、 定量PCRやWBでの差異がマスクされることなどの欠点を有する。そのため、CRHを含有するニューロン由来不死化細胞(CLU)を入手して解析を行う予定である。「NOX1によるうつ様行動制御機構の解明」当面はBDNF発現調節機構としてエピゲノムに着目して解析を行う。最終的にはICAT法によりレドックスプロテオミクスを行い、NOX1由来ROSによる標的分子の同定を行う。
備品は当研究室および大学や関連施設に完備されているため、購入の予定はない。よって研究試薬や動物購入などの消耗品に使用する。場合によっては関連学会(国内)参加のため旅費を申請する。
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