研究課題/領域番号 |
24500447
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
堀澤 健一 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (70424207)
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研究分担者 |
今井 貴雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10383712)
芝田 晋介 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70407089)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Musashi / RNA結合タンパク質 / 翻訳制御 / 神経発生 / 幹細胞 / 転写後制御 / 再生医学 |
研究概要 |
Msi1は神経幹細胞を始めとした未分化細胞に発現し、未分化状態の維持と成熟細胞への分化を制御するRNA結合蛋白質である。Msi1は標的mRNAに配列特異的に結合し、その翻訳を制御することで機能を発揮することが明らかにされている。しかし標的となるmRNAをはじめ、その分子機構には未知の部分が数多く残されている。我々はこれまでに、試験管内スクリーニングを行うことで、細胞遊走に関与するDcx遺伝子をMsi1の新規標的候補遺伝子として報告するなどの成果を挙げてきた。本研究では、さらにMsi1の新規標的mRNAを同定すると共に、標的候補因子Dcx, Dccについて、Msi1が中枢神経幹細胞の分化にあたり、どのような制御を行っているかを明らかにすることで、幹細胞の性質解明と再生医学的利用価値の追求を目的とした。 培養細胞を用いたDcc遺伝子の解析の結果、Dcc遺伝子はMsi1により顕著に翻訳抑制され、またそれがDcc mRNA上でのポリソーム形成阻害が原因であり、トランスフェクションやノックダウンなどの人為的な遺伝子操作だけでなく、神経芽腫細胞などの培養細胞株の分化によっても確認できる現象であることを証明することができた。 また、Dcc遺伝子に関して、Msi1のノックアウトマウスを用いたin vivo解析を行った。その結果、Dccの翻訳制御にMsi1のパラログ遺伝子がMsi1機能の代償効果をもたらすものとして関与する可能性が見出された。今後は、Msiパラログを含めた解析を行う必要があると思われる。 また、Msi1の新規標的遺伝子としてPTENの解析を行ない、Msi1と発癌の関連性を解析することができたほか、ゼブラフィッシュもMsi1に関しても解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していいた初年度のin vitroでの課題をほとんど終了することができている。それに加え、次年度で予定していたMsi1ノックアウトマウスを用いたin vivo解析を開始することができた。 さらに、新規標的であるPTENやゼブラフィッシュにおけるMsi1の解析なども行うことができたため、予想以上の成果を得ることができた。 また、in vivoでのMsi1の働きについて、そのパラログ遺伝子の代償作用の可能性を示すことができたため、今後のin vivo解析の方向性を見出すことができたことは、非常に大きな意味をもつ結果である。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroおよび培養細胞を用いたアッセイを行うことで、Msi1のDcc遺伝子に対する分子レベルの機能解析を十分に進めることができた。今後は、in vivoでの解析を中心に進めることを目標とするが、Msiパラログ遺伝子の解析なども視野に、包括的な機能解析を行いたいと考える。また、更なる新規標的の機能解析や、マウス以外の種における解析なども進めることにより、Msi1のより詳細な機能を明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は計画がスムーズに進行し、試薬などの消費を最低限に抑えることができたため、予算額よりも少ない研究資金で成果を得ることができた。 しかし、今年度の成果から、in vivoの解析については、Msiパラログ遺伝子の解析を含め、より広範かつ包括的な解析が必要になると予測されるため、繰越分を予算として計上した。
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