研究課題
本研究の目標は、中枢神経系(CNS)で産生される低分子ガス状メディエータの生成・受容機構を探究し、ガス分子による脳局所血流調節及び代謝リモデリングのメカニズムを解明することである。脳ではニューロンに局在するヘムオキシゲナーゼ-2により、マイクロモルレベルの一酸化炭素(CO)が産生されることが分かっていたが、COの生理学的な意義は不明だった。我々はこれまでに、COを受容する蛋白質としてアストロサイトに高発現しているシスタチオニン ベータ-合成酵素に着目し、アストロサイトが血管拡張因子である硫化水素を生成していることを見出した。研究最終年度は、「表面増強ラマン散乱」(SERS)を応用した新規SERSディバイスを開発し、非標識の組織で、ガス分子や低分子代謝物を画像化する技術開発に取り組んだ。100 nmサイズの金属ナノ粒子の表面に吸着した分子のラマン散乱強度が、数桁も増強する現象が発見されて久しい。この現象は、“表面増強ラマン散乱”とよばれ、飛躍的に解明されていた。しかし、近年のナノテクノロージーの進歩をもってしても、組織イメージングができる大面積のSERS基板の作製は困難であった。我々はアルミの水熱処理によってベーマイトというナノ微細凹凸構造が容易に形成されることを利用し、その上に金原子を蒸着し高いSERS活性をもつ“Gold Nanocoral”(GNC; 金のナノサンゴ礁)を開発した。我々はGNCを駆使して、脳梗塞部位のATP分解産物の上昇を、特殊な標識なしで画像化することに成功した。最近COが金と相互作用して、2150 cm-1近辺にCO特異的なSERSシグナルを発することを突き止めた。この性質を利用して、COのリアルタイムイメージングを施行したい。我々の目標とするneurovascular unitでのガスの偏在特性を同定するため、大きな武器となり得る。
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ACS Nano
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Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism
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