研究課題
ヒトまたはほ乳動物の中脳黒質に存在する褐色のメラニンであるニューロメラニン(NM)の生成過程においては、DAまたはNEとともに、DAとNEからの代謝物の酸化的重合の関与も重要視されている。DAとNEからの代謝物としては、DOPAC、DOPE、DOPEGおよびDOMAが知られている。これらの代謝物がNMに含有されているかどうかを調べるには、HI法が最も有用である。NMのHI還元によりDOPAC、DOPE、DOPEGおよびDOMA由来の構造単位は、アミノヒドロキシフェニル酢酸(AHPAA)とアミノヒドロキシエチルベンゼン(AHEB)を与えると予想される。これらの化合物は、市販品がないため新たに合成する必要があった。今回、まず、AHPAAは、m-またはp-ヒドロキシフェニル酢酸のo-ニトロ体を得るために60%硝酸と反応させた後、57%HIによりニトロ基を還元して望ましいAHPAAを合成した。AHEBはm-またはp-ヒドロキシエチルベンゼンに同様に硝酸を反応させた後、HIにより還元し、目的のAHEBを合成した。以前合成していたAHPEAも今回新たに、m-またはp-ヒドロキシエチルアミンのニトロ化、還元により合成した。天然の黒質由来と青斑核由来のNMをHI水解したところ、黒質由来のNMからは初めてAHEBを確認することができた。また、青斑核由来のNMからは、AHPEA、AHPAA、AHEB、AHPを初めて検出することができた。このことは、黒質由来、青斑核由来のNMは、DAおよびNE由来のみならず、DOPA、DOPAC、DOMA、DOPEおよびDOPEG由来であることを暗示している。
2: おおむね順調に進展している
NMがDA、NEのみならず、これらの代謝物由来のカテコールアミンも含まれていることが初めて証明され、新たな合成反応により新規マーカーを得ることができ、DA、NE以外のカテコールアミン代謝物の定量が可能になった。様々な年齢のNMと部位の異なるNMを分析して、加齢に伴うNMの構造変化を調べた。青斑核から得られたNMで42歳から92歳までのヒトの検体を調べたところ、TTCA/PDCA比が53歳まで上昇したが、それ以降減少することがわかった。一方、被殻、前運動野皮質、小脳から得られたNMで年齢差を比較したところ、4-AHP/PTCA値が年齢の上昇にしたがい、有意に高くなることがわかった。
合成NMとタンパク(例えばBSA)と反応させて、得られたEuBSA (DA由来のメラニンとBSAとのcomplex)とPheoBSA(DA-cys由来のメラニンとBSAとのcomplex)のメラニン含量を調べる。さらに、Fe2+イオンを加えた場合に、その含量がどの様に変化するかを調べる。これらのメラニンの合祀枝は、L. CasellaによるJ. Biol. Inorg. Chem (2012)の方法に従って合成する。つづいて、得られたNM-BSA complexを用いて、加熱処理したメラニンのagingのシュミレーションを行い、天然NMと比較する。さらに、被殻、前運動野皮質、小脳から得られたメラニン色素のagingを昨年より詳細に調べる。その際には、新たなaging markerとして、ピロール-2,3,4-トリカルボン酸(iso-PTCA)とピロール2,3,4,5-テトラカルボン酸(PTeCA)の含量を測定し、これらのマーカーがaging markerとして使えるかどうか調べる。これらの化合物は、aging markerとしてすでに報告されている(2013)。合成NMの三次元構造を解明するためにメラニン表面の酸化電位測定を合成NMに適用する。カテコールアミンとシステインの様々な比率で合成したDA-cysメラニン、DOPA-cysメラニン、DOPAC-cysメラニンを合成し、これらの表面活動電位を測定することにより我々が提唱しているcasing modelを証明する。
高価な消耗品であるHPLCカラムの使用状況で、予想以上にHPLCカラムが長持ちしたため、買い換える必要がなかったため。HPLCカラムは使用しなくても保存状態がよければ長持ちするために、買い置きをする。
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